MLB東奔西走BACK NUMBER
メジャーを席巻する超弩級の新人、
ヤシエル・プイグは「史上最強」か!?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/06/22 08:02
身長191cm、体重111kgという長身に加え、全身がバネのようにしなるそのプレーはこれまでのメジャー選手とは違ったすごさがある。22歳という若さにそのパワーは底知れない。
LAッ子を虜にした力強く燃えたぎるプレースタイル。
その勢いはまだまだ留まることを知らない。
デビューから2週間以上経過した6月18日現在、13試合に出場し無安打試合はわずか2試合のみ。打率.479を記録している。しかもドジャースのドン・マッティングリー監督は、主力選手の戦線離脱もあり、プイグに1番ばかりかクリーンアップまでを任せるという重責の中にあっての成績なのだから驚かされる。
それだけではない。ドジャース関係者が口を揃えて言うように、彼のプレースタイルはパワフルでエネルギーに満ちあふれている。
ぜひMLB公式サイトやYouTubeにアップされている彼の動画をチェックして欲しい。キューバ出身の影響か、彼のプレーは人々を興奮させるラテン民族の燃えたぎる血潮を感じさせる。ドジャース・ファンがプイグの虜になってしまったのも容易に想像がつくはずだ。
「プイグは我々が失っていた活力をもたらしている」
ベテラン捕手のラモン・ヘルナンデス選手が評するように、開幕から予想外の低迷が続くドジャースの中にあって計り知れないブースターとして機能している。
実力未知数のキューバ亡命選手に7年41億円の大型契約。
プイグといえば、昨年6月にキューバからの亡命選手として、どのチームとも契約できるFA選手ということでドジャースと契約し、話題となった。
わずか21歳の若者に用意した契約内容は7年4200万ドル(約41億円)。しかもドジャースは、彼の練習をわずか1回見ただけで、獲得を決めたということで周囲を驚かせた。
キューバ出身の選手といえば最近ではレッズと契約したアロルディス・チャプマン投手(5年2525万ドル)やアスレチックスと契約したヨエニス・セスペデス選手(4年3600万ドル)らが同じく大型契約を結んでいるが、彼らはキューバ代表チームとしてWBCにも参加経験もあり、メジャーのスカウト達もしっかりその実力をチェック済みの選手たちだった。
しかし、プイグは亡命するまでにキューバ代表として出場した国際大会は、2008年のジュニア世界選手権と2011年のワールド・ポート・トーナメントの2大会のみ。
対戦相手も決してレベルの高いチームとは言えず、彼の実力はかなりの部分で未知数だった。だからこそプイグが亡命してFA選手として交渉可能になりながらも、ヤンキースなど多くの球団が二の足を踏んでいた。