スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
MLBが目指すボールパーク化戦略。
サービスの品質を決めるものは何か。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byGetty Images
posted2013/06/25 10:30
ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパーク。ホセ・イグレシアス選手の打席で起こった“ウェーブ”に参加するファンたち。
このコラムでも、プロ野球やJリーグの観客動員数について触れてきたので、ふと世界一観客数を集めるチームはどこだろうと気になって調べてみた。
個別のチームを見る前に、まずはリーグから。Sporting Intelligenceによると世界のプロスポーツリーグの1試合の平均観客数で比較すると、1位に輝くのはやはりNFLで67,591人。日本人にとってはあまりなじみがないかもしれないが、アメリカにおけるアメフト人気は驚くほどで、リーグ優勝決定戦の「スーパーボウル」では視聴率もトップランクであるため、マーケティングの世界でも企業がスーパーボウルで仕掛けるプロモーションに注目するものも多い。
NFLにつづくのは、ブンデスリーガ(45,116人)、プレミアリーグ(34,602人)、AFL(オーストラリアンフットボールリーグ、32,748人)、そしてMLB(30,895人)となっている。ちなみに日本のプロ野球は24,965人で第8位にランクインしている。
では、上位に輝くNFL、ブンデスリーガ、プレミアリーグ、MLBでそれぞれのリーグ観客動員数のトップチームはどこであろうか。
主要5リーグのトップリームはここだ。
スポーツ専門メディアのESPNによると、それぞれのリーグのトップ5は以下の通りである。
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年間入場者数では試合数の多いMLBのチームが圧倒的。
1試合平均入場者数でみると、NFLの各チームがダントツであるが、NFLは年間試合数が16試合と少ないため、シーズン入場者全数でみると、1位は圧倒的に試合数が多いMLBとなる。2012年には74,859,268人の観客数を動員した。
さて、そのMLBであるが、今年は観客数の落ち込みが取り上げられることもあるようであるが、それでも2011年、2012年と2年連続で観客動員数の伸びを示している。MLBによると、特に2012年は史上5番目の入場者数を記録した。
中でも特筆すべきは、ボストン・レッドソックス。以前ご紹介したように2003年5月以降チケットのソールドアウトを果たしている。ちなみに上述のランクにレッドソックスが登場していない理由は、スタジアムの大きさが理由である。レッドソックスのスタジアムであるフェンウェイパークの収容人数は37,493(ナイター時)と小さく、球場収容率で比較するとMLBのチームの中で第1位となる。
さて、この人気を支えるのが、球場をただ試合をする場所「スタジアム」と捉えるのではなく、「ボールパーク」と捉え、誰もが楽しめる場所づくりを目指すアプローチである。球場内外でのファンイベント、飲食店や座席の充実はもちろんのこと、ボストン・レッドソックスは、長年オーナーを務めたYawkey氏の名をとってつけられた球場前の通りYawkey Wayでもエンターテイメントを繰り広げ、ファンをスタジアム外でも楽しませている。
日本でも楽天やロッテをはじめとして「ボールパーク」を目指しての動きを見せている。楽天が球場の修理を行ったり、ロッテが球場内の食事を魅力的にしたり、花火をあげたりしている。試合の勝ち負け以外の点にも力を入れて観客を楽しませようとしており、その効果も見え始めている。