ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
道に迷い、ヒルに襲われるも……、
「トレイルが日常、街が非日常」に。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/06/14 12:45
トレイル上にある「マクドナルド」を示す看板を前に興奮する井手くん。
アメリカ開拓史の大動脈ルート66も今は廃れて……。
ヘロヘロになりつつCajon pass(カホンパス)という峠に辿り着く。
実はこの峠、あの「ルート66」が通っていた地点なのだ。事前に調べていた僕はハイカーに言う。
しかし、みんな総じて「そうだったんだ。知らなかったよ」という答え。中には「ルート66ってなんだ?」という人もいる。
実際、アメリカ開拓史の大動脈であったルート66は、トラックのタイヤと空き缶が転がり、廃れた様子だった。ジョン・スタインベックが「母の道」と呼んだ歴史的な道路も、埃を被ったような記念碑が微かに残るだけで、さみしげだ。
スタインベックといえば、つい最近オクラホマで起きた竜巻に関して、心配するメールを母からもらったが、土地勘のなさに笑ってしまった。僕がいるのは“希望の地”カリフォルニアだというのに。
「シャシンカ! お前、結局今日も歩いちまったな(笑)」
その日は皆疲れてしまい、ハイウェイ沿いの「ベストウエスタン」というモーテルチェーンに泊まった。
ロジャーと、先程の女の子2人と僕の4人でシェアしたので、1泊15ドルほど。僕らの旅の計画を聞いた受付の女性は、呆れた顔をしてハイカー用ディスカウントを用意してくれた。
翌朝、僕がここぞとばかりにモーテルでのパンケーキとソーセージの朝食を大量に詰め込んでいると、3人は早々にトレイルへ向かった。
僕も慌てるように荷物を片付けてチェックアウト。今日も30マイルほど歩けば次の町につく。急ぐ必要はないのだが、皆が行くので引っ張られるように僕も進む。
時速2マイルは時速3マイルに。1時間に1本取っていた休憩は2時間に1本で十分になってきた。体が慣れてきたのだろうか。
とにかく、次の補給地点に1日で着いてしまった。
陽が暮れた頃に町に着くと、またもロジャーと会う。他のハイカーも沢山いる。
「シャシンカ! お前、結局今日も歩いちまったな(笑)」
いつかのように彼にエンジェルを紹介してもらい、この町でもすぐに泊まる場所を確保出来た。部屋の床に寝袋を敷いて眠る。