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激戦必至のコッパ・イタリア決勝!
ローマを包む史上初ダービーの熱狂。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/05/22 10:50
オリンピコ・スタジアムで発炎筒を焚くローマのサポーター。
“ダービー男”クローゼがラツィオを上昇気流に乗せる。
一方、新監督ペトコビッチの下で、一時はリーグ首位をうかがう勢いを見せたラツィオは、1月末の準決勝でユベントスと互角に渡り合い、堂々の戦いぶりでセリエA王者を沈めた。
その後、春を迎える前にチームは急失速したが、低迷の大きな要因はエースFWクローゼの右ひざ負傷離脱だった。クローゼが本格復帰するやチームは再び上昇気流に乗った。
35節ボローニャ戦では、圧巻の“チンクイーナ(1試合5ゴール)”を達成。リーグ史上27年ぶり12人目、クラブ史上初の快挙にも「ゴールをチームと家族に捧げたい」と控えめに喜んだだけ。だが、この寡黙なドイツ代表FWの昨季加入後、ラツィオはダービー4戦で3勝1分け。通算2ゴールの“ダービー男”クローゼは、ロマニスタにとって今や天敵に等しい。
ロスタイム決勝弾を奪った最初のダービーの翌朝、郵便物を受け取りに自宅玄関に出たクローゼが、熱心なラツィアーレだった配達人からその右足へ感謝の接吻を受けた逸話はあまりにも有名だ。
最終的に7位に終わったが、限られた戦力で好ゲームを連発した指揮官ペトコビッチの手腕を称える向きも多い。イタリア挑戦1年目を白星とタイトルで締めたい彼は「ローマを苦しめてみせる」と策を練る。
血の気の多いサポーターの衝突を地元当局は深刻に懸念。
ローマダービーは、その喧騒と血生臭さの度合いで、他の都市のダービーと一線を画す。
ローマとラツィオによる対戦が決まった途端、ローマ市長をはじめとする自治体の長たちと警備を担当する地元警察及び機動隊は、決勝のナイトマッチ開催を強硬に反対した。
これまでにも両チームのウルトラスによる幾多の流血事件が起きてきたが、4月の直近カードでも、やはり試合前にスタジアム周辺でウルトラスによる争いが発生。ナイフによる切傷や頭部打撲など8人が負傷し、沈静化を図る警官隊との衝突の後、4人が逮捕される騒ぎが起きた。スタジアム周辺の安全確保は、ダービーの深刻な問題だ。
試合開始時刻をめぐって訴訟沙汰も起きるなど、リーグ機構との協議も二転三転。
「なら、うちでやればどうでしょう?」と、昨夏にもイタリア・スーパー杯招致実績のある北京市が、決勝誘致に名乗りを上げるなど紆余曲折を経て、まだ明るい夕方6時開催に決まった。