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早くも独走態勢の構えを取る西武。
金子侑司は中島の跡を継げるのか?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/05/01 10:30
西武の背番号2を背負う新人・金子侑司はパンチ力のある打撃と俊足を武器に、好調・西武の牽引役となっている。
強いチームの秘訣は“流出と育成の繰り返し”にある。
楽天は岩隈久志がマリナーズに移籍した'12年、勝率5割と健闘したが4位にとどまり、ロッテはイ・スンヨプが巨人に移籍した'06年、前年の日本一から4位に、薮田安彦(→ロイヤルズ)、小林雅英(→インディアンズ)が海外移籍した'08年は前年の2位から4位に、さらに久保康友が阪神に移籍した'09年はその4位から5位に成績を落とした。
オリックスはイチロー(→マリナーズ)、田口壮(→カーディナルス)が海外移籍した'01、'02年以降、主力の流出自体が'07年(6位)の谷佳知(→巨人)くらいしかない。このオリックスに象徴されるように、下位に低迷する球団はそもそもMLBを含む他球団から狙われるような大物が少ない。
日本ハム、西武、ソフトバンクの上位球団は、中心選手が流出してもそれに代わる若手がすぐ出てくる。西武を例にとるなら、松井の後釜に就いたのは中島裕之で、松坂のあとは涌井秀章、和田のあとは栗山巧、細川のあとは炭谷銀仁朗と、すんなりと後継者が育っている。そして中島が海外移籍し、涌井や栗山にもFA権を行使した移籍話が浮上するかもしれない。そういう際限のない“流出と育成の繰り返し”に飽きない球団こそ、パ・リーグでは上位に君臨することが許されるのである。日本ハム、ソフトバンクにしても同様のことが言える。
中島の後継者候補に名乗りを挙げた西武・金子侑司。
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中島の後継者探しは、過去のドラフトを振り返れば'08年からスタートしていると思う。それまでまばらだった内野手の指名が、'08年以降、毎年行なわれているからだ。
◇'08年3位 浅村栄斗 ◇'09年2位 美沢将 ◇'10年5位 林崎遼
◇'11年4位 永江恭平 ◇'12年3位 金子侑司
この中から中島の後継候補に名乗りを挙げたのが金子である。今季は27試合出場の時点で、打率.306(リーグ11位)、打点12(チーム5位)と、その成績は立派の一言。その大きな特徴は俊足で、私が見た4月16日のオリックス戦では内野安打を2つ記録している。
最初の内野安打のときの一塁到達タイムは俊足と評価していい4秒ジャスト。また4月18日のオリックス戦では第1打席でライト前ヒットを放ち、このときの一塁到達タイムが流して走るのが当たり前のヒットでは珍しい4.3秒未満の4.24秒で、ゲームへの参加意欲の高さを表している。