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浦和がリッピの広州恒大を撃破!
阿部勇樹が見せた“前に出る勇気”。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2013/04/25 12:00
チーム2点目となるゴールを決めた直後、マルシオと抱き合って喜ぶ阿部(写真左)。試合後には「チームに迷惑をかけました。精神的にまだまだ弱い」とさらなる飛躍を誓った。
“リスクを負って走る”阿部を見て、浦和が勢いづく!
しかし後半に入ると、浦和は開き直った。
52分のことだった。
左サイドで仕掛けた槙野智章のクロスがファーサイドを駆け上がった平川忠亮のもとへとこぼれる。33歳のベテランはやや角度のないところだったが、あえて右足のインステップキックで強く蹴り込んだ。
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「逆サイドに打つことで、慎三(興梠)あたりが詰めてくれるんじゃないだろうか? そういう意図のあったシュートではありました」
平川の言葉通り、興梠が鋭い反応で同点ゴールをねじ込むと、浦和イレブンはさらに前に出る姿勢を強めた。
その象徴はキャプテンの阿部だった。
ビルドアップをはじめとした攻守のリンク役としてチームを締める阿部だが、後半に入ると柏木陽介やマルシオが務める2シャドーの位置まで顔を出す場面もあった。ハーフライン上からのスプリント、そして槙野とのパスワークから自らスライディングで飛び込んだ63分の得点は、“リスクを負って走る”真骨頂のようなプレーだった。
本人は前半のPK失敗もあって「先にPKを決めておければ、チームとしての戦いは楽になったのかなと思うので……」と冷静に振り返っていたが、勝利を引き寄せる大きな1点だった。
「相手の監督はワールドチャンピオンにもなったことがある人」
阿部の勝ち越しゴール後も攻勢を強める浦和に対して、プラン通りに試合を進めていたはずのリッピ監督はイライラを隠し切れなくなっていた。ミシャは試合後の会見でそのことを問われると、少々紅潮した表情で語った。
「今日の対戦相手の監督はワールドチャンピオンにもなったことがある人です。その方が我々のやり方を研究していないことはなかったはずです」
そして、0-1の敗戦に終わった“さいたまダービー”を引き合いに出した。
「例えば大宮戦では(相手FWの)ノヴァコビッチ選手が阿部に対してマンマークについて、それを引きはがすプレーができませんでしたが、今日に関してはできていました」
大宮戦での浦和は阿部だけではなく、鈴木啓太ら後方でゲームを組み立てる選手にプレッシャーをかけ続けられてリズムを生み出せなかった。広州恒大戦でも膠着した状況が生まれつつあったが、それを打破したのは平川や阿部らのプレー選択だった。