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「チャンピオンになりたいんだ!」
名を捨て実を取るオランダの是非。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/04 13:20
ウルグアイ戦でもオランダは名を捨て実を取るはず。
果たして実際的なサッカーは今大会唯一の5戦全勝をオランダにもたらした。失点は3。うち2点はPKによるものだ。
対戦相手のうちスロバキアまでの4国の攻撃力は高がしれている。しかし先日のブラジル戦では52分まで試合をほぼ完璧にコントロールされながら、厚みはないものの非常に鋭い敵の攻撃を凌ぎ続けた。余裕があったわけではない。が、粘っこく我慢強い守備は、優勝候補を下す番狂わせのカギとなった。
ただし――である。守備重視のサッカーと稚拙な攻撃は関係ない。同じく守備に傾いていたブラジルは、8人で守り3人で攻めながら、速く巧みなプレイをもって鮮やかに得点していた。オランダにもロッベン、スナイデル、ファンペルシ、カイトに、若いエリアやアフェライといったタレントが揃っているのだから、やれないわけがない。
2年前のユーロでも武器になっていたカウンターは健在。だが、オランダがそれだけというのは物足りない。もっとダイナミックなサッカーで、コンビネーションの妙を見せてもらいたい。
ドゥンガのブラジルをヨハン・クライフは「金を払ってまで観ようとは思わない」と評した。母国のサッカーについても、おそらく似たような思いを抱いているのではないだろうか。
だけれど今回のオランダは名を棄てて実を取る。準決勝ウルグアイとの一戦も、きっと堅く勝ちに行くのだろう。