欧州CL通信BACK NUMBER
バルサ、ミランを下してCL8強進出。
4-0の圧勝劇を生んだスパイスとは?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2013/03/13 13:10
メッシによるこの試合最初のゴール直後に、駆け寄ったチームメイトたち。ミランとの2ndレグは、強いバルセロナが復活した記念すべき試合となった。
ひとり落ち込むマスチェラーノに駆け寄ったシャビ。
マスチェラーノがミスを犯した数十秒後にメッシが2点目を決めた、その直後の風景――。
ゴールパフォーマンスをするメッシの下にチームメイトが集まり抱擁を繰り返す……しかしマスチェラーノはひとりだけ自陣に戻りうつむいていた。そんな彼を見つけたのがシャビだ。
シャビは相手ゴール前で喜ぶ選手の輪には加わらず、ひとりでマスチェラーノのところへいき、抱きついて頭を叩いた。
「あのミスでマスチェラーノは少し落ち込んでいた。だから駆けつけて勇気づけたんだ」とシャビは言う。
この場面以外でも、シャビが担った役割は大きかった。
90分間、ジェスチャーを入れながらチームメイトに指示を出し続けた。
中央でしばらく繋いでから、サイドのアウベスとジョルディ・アルバを使うこと。詰められたら一度自分かイニエスタにボールを戻させるということ。
3点目のビジャのアシストをしたのもシャビだったが、それ以上に光ったのは、アシスト以外の、チーム全体の指揮だった。
バルサは3-0のまま試合終盤を迎え、何度か押し込まれる場面はあったものの、決定的なシュートは打たれずに試合を進めていく。ロスタイム、ミランが狙い続けたカウンターを逆手に取るように、アルバが4点目を決めた。
「バルサは突破に値した。いまだに世界最高のチームだよ」
ピケが言う“歴史的な勝利”の裏には様々な貢献があった。
ロウラとビラノバの考え抜いた策。メッシは2得点でカンプノウの喝采を浴び、アウベスは右サイドの主になった。3点目を決めたビジャの存在は、メッシが自由にプレーできた最大の理由だ。チーム全体を見続けたシャビの貢献も忘れてはならない。
ちょうど3週間前、ミラン戦の敗戦から続いた低調なパフォーマンスは、この試合をもって終わった。かつてのバルサが戻りつつあるのだ。
試合後の敵将アッレグリは、どこかすっきりした表情でTVのインタビューに答えていた。
「バルサは突破に値した。いまだに世界最高のチームだよ」
悔しさもあるはずだ。しかしきっと、それが彼の本音だったのだろう。