WBC 侍ジャパンの道BACK NUMBER
最後のワンピースは中田翔!?
不振の侍打線の救世主となるか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/04 12:05
「雲の上の存在の立浪さんがずっと見てくれてる。結果を残したかったので」と語る中田と、「中田はまだまだ日によって打ち方が違うけど、試合は結果が全てだからね」とコメントした立浪打撃コーチ。
中田の存在が、打線編成の一番大きな鍵となる!
「昨日も悔しかったんじゃないかな」
こう中田の心情を察したのは山本浩二監督だった。
「本人もウズウズしてたところがあっただろう。それでああいう場面で打席に立って結果も残した。あの先制点は大きかった」
この日は2回に中田の左前タイムリーで先制すると、5回には9番・松田宣浩の三塁内野安打を足場に送りバント、暴投、四球の1死一、三塁から3番の内川聖一が右前タイムリー安打で2点目。さらに阿部慎之助が歩き、満塁から糸井嘉男がセンターオーバーの走者一掃二塁打を放って一挙、3点を奪う攻撃もあった。
6安打で5点。
数字を見れば、まだまだ打線に当たりが戻ってきたとは言いがたい。ただ、それでもこの5点の中には、3連覇へのいくつかの光が見えてきている。中でも中田が2安打を放ったことが、どうやら今後の打線編成では、一つのカギとなりそうなのだ。
「調子のいい打者とそうではない打者がいるのは確かです。だから何人かいる好調な打者をいかにからめて打線を組めるか。2次ラウンドでは、そこがポイントになってくると思います」
こう語るのは立浪コーチだった。
必ず出塁する内川の後ろに続く、阿部、糸井……その次が欲しい。
この日は右ひざの違和感で開幕戦のスタメンから外れた阿部が4番に復帰。3番・内川、4番・阿部、5番・糸井でクリーンアップを組んだ。おそらく当面はこの並びで打線の軸を作ることになりそうなのだが、この中で特に注目されるのは、2試合で7打数3安打2四死球と5度も塁に出ている内川の出塁率だった。
高い確率で塁に出る内川を生かしていくためには、もちろん阿部、糸井のバットにかかる比重は大きくなる。
「ただ、もう一人、後ろに還せるバッターがいれば得点力は大幅に上がることになる」
これが立浪コーチの見立てなのだ。
その期待を背負って開幕戦で糸井の後ろを打ったのが稲葉篤紀であり、2戦目が長野久義だった。しかし、この2人が2試合で合わせて12打数1安打。いずれもまだ、スランプを脱出しきれていないのが現実なのである。
それが打線に厚みがでない一つの大きな原因だったのだ。
だからその駒探しが急務だった。
そこに中田が先制打を含む2安打を放って名乗りを上げてきた。