欧州サムライ戦記BACK NUMBER
修羅場を乗り越えてきた香川と吉田。
プレミア日本人初対決で見せた輝き。
text by
鈴木英寿Hidetoshi Suzuki
photograph byAFLO
posted2013/01/31 11:40
試合こそリーグ首位のユナイテッドが2-1で勝利を収め無敗記録を12試合と伸ばしたが、香川、吉田ともに活躍して多くの見せ場を作った。李忠成はベンチ入りしたが、出場は果たせなかった。
チーム内での立ち位置を確立しつつある香川。
1点のビハインドを背負っていた前半8分。
相手DFのクリアボールをワンタッチで最終ライン裏へと通し、ルーニーの同点弾をアシスト。10分には右サイドからのクロスがファーサイドへと流れ、ルーニーのパスから左足で自らシュートを放つ。これは惜しくもバーを直撃した。31分にはルーニーからのパスを受け、ファンペルシへとラストパス。エースのシュートは大きく枠を外れた。
独特のリズムとパスワーク、スペースメイクで2トップと連動してみせた香川は、チーム内での立ち位置を確立しつつあると言えるだろう。
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終わってみればユナイテッドが2-1の勝利。香川は73分にナニと交代となったが、オールド・トラッフォードのファンは大きな拍手で、彼のパフォーマンスを称えている。
プレミアでの日本人対決について香川は「特別(吉田とは)何も話していません」と語った。そして「僕たちにとっては、今は試合に出て結果を残すことがお互い大事ですし、こういう刺激的な環境で出来ているのが成長になると思う」と続けている。
ファンペルシやルーニーと対峙した吉田の手応えと課題。
一方の吉田は、この対決をこう振り返る。
「アウェーのオールド・トラッフォードで、相手にフラストレーションを溜めることが出来たのは凄く良いこと。でも、ルーニーなんかをもっと本気にさせられるような戦い方が出来れば、もっと良かったと思う。細かい部分以外のところは、ある程度やれるようになってきている。細かいところにこだわってこれからはやっていきたいと思います」
ファンペルシやルーニー相手にも全く動じず、ハイボールでの競り合いやカバーリングでも確かなプレーで最終ラインを統率。シーズン前半を戦い終えた吉田のプレークオリティは、間違いなくプレミアリーグで通用するレベルに達している。
9月29日のトッテナム戦を最後にゴールから遠ざかっている香川。プレミアでのデビュー戦となったアーセナル戦で6失点の大敗を喫し、ほろ苦いスタートとなった吉田。
あれから数カ月が経過し、香川は怪我での離脱が、吉田は自らを獲得してくれたナイジェル・アドキンス監督の解任があった。それぞれの修羅場を経た2人が対戦したこの試合で感じたのは、プレミアリーグの選手としての両者の確かな存在感、そしてさらなる飛躍への期待だった。