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大谷翔平はメジャーか日本ハムか?
日米の選手育成法の違いを検証する。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/10/29 10:30
「すごく評価して頂いたのは、すごく有難いなと思っています。ですがこの間、決断した通り、自分のアメリカでやりたいという気持ちは変わらないです」とドラフト後にコメントした大谷。
高卒投手は3~4年を育成期間にあてるのが米国流。
ムーアは2011年にダブルAに昇格すると、ここでブレイクし、18試合に登板して8勝3敗、シーズン途中にトリプルAに昇格して、ここでも4勝0敗の好成績を残す。そして9月にはついにメジャーリーグへと到達する。
そして2012年には31試合に先発して11勝11敗の成績を残し、レイズのローテーションの一角を占めるまでになった。
ムーアの育成パターンは非常に順調なもので、メジャーへの道のりは、高卒の場合だと少なくとも4年は必要だと見た方がいいだろう。
2012年はブライス・ハーパー、マイク・トラウトなど高卒の野手が華々しい活躍を見せたが、投手の場合は3、4年ほど育成の期間が必要になる(ハーパーは高校で1年飛び級し、短大を1年で中退後の入団)。
では給料はどうなっているのか?
さて、その3、4年の間、マイナーリーグではどのような給与体系になっているのだろうか。
最初の契約年 最大 1150ドル/月
シングルA 初年度 1500ドル/月
ダブルA 初年度 1700ドル/月
トリプルA 初年度 2150ドル/月
2年目以降は上記の数字が最低ラインとなる。トリプルAでも日本円にすれば17万円程度で、遠征先では1日当たり20ドルの食事券などもついてくるとはいえ、生活は厳しい。
アメリカのスポーツ専門局ESPNのドキュメンタリーなどを見ていると、時にはエージェントがやってきて、マイナーリーガーにステーキをご馳走しているシーンなどが見られた。エージェントは先行投資のつもりで食事の席を設け、コミュニケーションを取るのだろう。
ちなみに大谷の高校の先輩で推定1億円の契約金を手にした菊池雄星は、初年度の年俸として1500万円をもらっていたから、ドラフト1巡目クラスの高卒ルーキーのサラリーで比較した場合、日米間でどちらが恵まれているかは一目瞭然だろう。
日本の方が、素質が認められた選手に対する扱いは厚いのだ。