プロ野球亭日乗BACK NUMBER
CSでの苦しみが呼んだ巨人の快勝。
内海と吉川の明暗を分けたものとは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/10/28 12:25
日本シリーズ初戦の4回、巨人が阿部慎之助の技ありの一打で1点を先制すると、2死一、二塁からボウカーが3ランホームランを放ち、試合の趨勢を決した。投げては先発の内海哲也が7回無失点の好投。原監督は「ジャイアンツのエースらしい投球を、堂々とやってくれた」と称賛した。
短期決戦の難しさを思い知らされた初戦となった。
クライマックス・シリーズ(CS)のファイナルステージで中日にいきなり3連敗。そこから3連勝して日本シリーズに駒を進めてきた巨人だが、連敗にはそれなりの理由があった。
それは、試合から遠ざかり、選手一人一人が実戦の勘を取り戻すのに時間がかかったことだった。そしてその裏には、巨人ならではのムリ難題があったのだ。
10月7日の公式戦最終試合からCSファイナルステージ開幕までの10日間。実は原辰徳監督は当初、最後の仕上げのために10月10日から14日まで宮崎で合宿を行い、4試合の練習試合を行って仕上げる計画を立てていた。
ところがそこに親会社から待ったがかかったのだ。読売新聞社の主催するリーグ優勝祝賀会とCS激励会というイベントが、スケジュールのど真ん中の12日に飛び込んできたのである。
やむなく合宿を13日から1泊2日という強行日程に変更。CS初戦に先発した内海哲也投手などは実戦登板できずに、先発陣では第4戦に投げた澤村拓一投手だけ、あとはリリーフ陣が調整登板を行うに止まった。
両チームに動きの差、実戦カンの差が随所に見えた理由とは?
一方、CSファイナルステージでソフトバンクをスイープした日本ハムは、10月11日から3泊4日の宮崎合宿で最終調整をみっちり行った。第1戦に先発した吉川光夫投手は中5日の間隔になるように11日の練習試合で実戦マウンドを踏み、最後の調整を行っている。
「選手がちゃんと普段通りの動きができるか。(ポストシーズンの)初戦を迎えるにあたって、一番気になるのはそのことだ」
こう語っていたのは在任8年間のすべてでポストシーズンに進出した落合博満・前中日監督だった。実戦カンをどう保って試合に臨めるか。今年のCSで巨人と日本ハムの選手の動きに違いが見られた裏には、こんな事情が隠されていた訳である。
ところが、だ。
そのCSファイナルステージを経て勝ち進んできた日本シリーズでは、まったく逆の現象が起こってしまった。
全6戦をフルに戦い中4日で臨んだ巨人と、19日にはシリーズ進出を決めて7日間のブランクのあった日本ハム。明らかに両チームには動きの差、実戦カンの差が随所に表れていた。