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3連敗から怒涛の3連勝でCS制覇!
巨人が手にした下位打線の得点力。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2012/10/23 11:45
3年ぶりの日本シリーズ進出を決め、東京ドームに詰めかけたファンの声援に応える原監督。今季はじめから「甲子園野球」と呼ぶ全員野球を目指していた原監督。下位打線がしっかり活躍した会心のCS優勝となった。
2位の中日に10.5ゲーム差。
レギュラーシーズンで圧倒的な力を見せつけ優勝を果たした巨人だが、クライマックスシリーズ(以下CS)ファイナルステージでは、その中日を相手によもやの苦戦を強いられた。
初戦に敗れ1勝のアドバンテージがなくなると、そこから3連敗。原辰徳監督が言う「土俵の徳俵」に追い詰められながらも、第4戦から3連勝。1勝3敗からの劇的勝利は、両リーグ通じてCS史上初だった。
「絶対王者」と目されていたチームが、難産の末に手に入れた日本シリーズへの切符……。
「ペナントレースにおいて、かなりのゲーム差というものを持って優勝することができました。そのことを、一人ひとり疑わず戦えたというところに勝利があったと思います」
試合後、指揮官はそう言って溜飲を下げた。
振り返れば、ファイナルステージでの巨人は思うような戦いができていなかった。
今季、12勝を挙げた杉内俊哉が“勤続疲労”のためCSに出場できなかったことはもちろん、第1戦から内海哲也、ホールトンと、ローテーションの柱が粘り切れなかったことが大きかった。リリーフも、ホールド王の山口鉄也が初戦、そして守護神の西村健太朗が第2戦と第3戦で連続失点を喫したのが誤算だった。
阿部、長野、坂本ら主力が抑えられたのに、なぜ巨人は勝てたのか?
打線にしても同じだった。
CSでも爆発を期待されていた、打率、打点でリーグ二冠王の4番・阿部慎之助が、前半3試合でわずか2安打と沈黙。トータルでも単打6本に終わった。さらには、1番・長野久義、3番・坂本勇人ら主力全員が打率3割に満たなかった。
ファイナルステージでは「打つべき人間が打って勝った試合」は、坂本と阿部のバットで決めた第4戦のみ。第5戦で代打サヨナラ安打を放った石井義人がMVPになったことからも、いかに攻撃陣が苦しんだかが理解できる。
巨人は、この戦いにおいて決して投打が噛み合っていたというわけではなかった。
しかし、そんな状況にありながらも最後の最後で勝利を手繰り寄せることにつながった、重要なポイントがあった。
それは、下位打線の奮起だ。