乾が決めた、値千金の“人生初”ヘディングシュート。

　そして、その2分後のこと。今度はそのアイグナーからクロスがあがる。ファーサイドに飛び込んだのは身長169cmの乾だった。ヘディングで豪快にゴールネットを揺らし、ついに同点に追いついたのだ。乾は、頭を触りながら嬉しそうに話す。

「いやぁ、良いボールが来ましたね。味方もいて、ちょっとビビりながらヘディングしたから……ダサいヘディングになりましたけど（笑）。まぁ、でも、人生初（のヘディングによるゴール）なので。良い記念になりました！」

　直後に守備陣の緩慢な対応からゲッツェに勝ち越しゴールを許すも、後半28分にショートコーナーからアンデルソンが頭で合わせて同点。フランクフルトは王者に真っ向から戦いを挑んで、3－3の引き分け。勝ち点1をつかんだ。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、スタンドを埋めたファンは抱き合って喜んだ。

　1年前には2部にいたチームとは思えない勢いがある。5試合を終え、フランクフルトは優勝候補のバイエルンにつぐ2位につけている。

ゴール量産の理由は、リーグトップのシュート数!?

　乾がハンブルガーSV戦でゴールを決めた際には「あんなプレー見たことない」と吹聴して話題をさらったフェー監督は、ドルトムント戦で乾が見せた活躍について満足気に語った。

「ああいう風に相手に向かっていけるし、ボールを持ってすごく速く動ける。とても価値のある選手だよ！」

　ブンデスリーガで3試合連続ゴールを過去に記録したのは、日本人選手では高原直泰と香川真司だけ。チームが好調であるとはいえ、乾はどうしてゴールを量産できるのか。

　ここまでの乾のシュート数を試合ごとに追っていくと興味深いデータが浮かび上がってくる。

第1節　レバークーゼン戦　  シュート6本  （チームトップ）
第2節　ホッフェンハイム戦　シュート4本  （チームトップタイ）
第3節　ハンブルガーSV戦　シュート6本  （チームトップ）
第4節　ニュルンベルク戦　  シュート4本  （チームトップ）
第5節　ドルトムント戦　       シュート4本  （チームトップ）

　MFであるにもかかわらず、すべての試合でチームトップか、トップタイのシュート数を記録しているのだ。本稿執筆時点で第5節の全ての試合が消化されてはいないが、第4節までの乾の総シュート数は20本を数え、バイエルンのミュラー、レバークーゼンのキースリンクと並んでリーグトップの数字となっている。

　これほどまで多くのシュートを打っている理由について、本人はこう語る。

「試合に入っていく上で、ちょっと遠めからでもシュートを打ったほうが、自分自身、（気持ち的に）乗れるので」

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