欧州サムライ戦記BACK NUMBER
フランクフルトの乾貴士が3戦連続弾!
快進撃支えるゴール量産の理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/09/26 12:10
自身「人生初」と言う値千金のヘディングシュートを決め、チームメイトから祝福される乾貴士。乾の3戦連続ゴールの活躍でチームは4勝1分け、現在2位につけている。
荒くれサポーターの心を、新加入の日本人選手が掴みつつある。
ブンデスリーガ第5節、アイントラハト・フランクフルトの乾貴士が3戦連続となるゴールを決めた。乾の1ゴール、1アシストの活躍もあり、昨季王者ドルトムントと3対3で引き分けた。
試合前からファンとメディアによる乾への期待は膨れ上がっていた。先週の金曜日までにフランクフルトの記録した開幕4連勝はクラブレコードでもあり、2部から昇格したチームの新記録でもある。そんな中、2試合連続でゴールを決めていたのが乾だったからだ。
ドルトムント戦の前日には『ビルト』紙のフランクフルト版が2試合連続でゴールを決めていた乾の特集を1ページの大半を割いて組んだ。そして、地元の『フランクフルター・ルントシャウ』紙も試合当日に無料配布する特別版で、日本人MFの特集を組んだ。そこにはこう記されている。
「魅力的な正統派テクニシャンの乾は、『ファンから愛される』選手への道を歩んでいる。この日本人はアイントラハトのアンサンブルの中にいるのだ」
“反撃ののろし”は、乾のシンプルなプレーから上がった。
ドルトムントをホームに迎えたこの試合、前半2分にマイヤーの落としを乾が狙うなど、順調な滑り出しを見せた。しかし、前半24分にドルトムントのピシュチェクのシュートが、フランクフルトのディフェンダー2人にあたり、コースが変わってゴールになる不運な展開に。その4分後にはロイスにファインゴールを決められた。フランクフルトは決して悪い戦いをしていたわけではなかったが、前半を終えた時点で2点のビハインドを背負ってしまう。
「ハーフタイムには監督から檄が飛んだし、それでみんなも吹っ切れました」
乾の言葉通り、後半からフランクフルトが勢いを取り戻す。
後半4分にはカウンターが発動。攻守の素早い切り替えは、フランクフルトが好調な滑り出しを見せている理由の一つだ。
ボランチのシュベクラーからのパスを受けた乾がドリブルで持ち込むと、右サイドへシンプルにパスを出す。走るスピードを落とさずにこれを受けたアイグナーがゴール右隅に蹴り込んで、反撃ののろしをあげる。
「前半はちょっと自分自身ミスが多かったし、シュートまで持っていく前に取られていることが多かった。ボールを持ちすぎていた部分はあったので、後半はシンプルに行こうとは思ってました」