いい流れを断たれてしまった、後半早々の失点。

　だが後半9分、なでしこのいい流れを断つように、追加点がアメリカに入った。

　後半、アメリカは2トップの強みを活かした攻撃をしていた。2失点目は、その意識が2トップに行き過ぎた隙を突かれた。MFロイドが中央でドリブルを仕掛けると、2トップのモーガンとワンバックは左右に流れた。モーガンに岩清水が付いたが、ワンバックとロイドの中間にいた熊谷は、どっちに付くか難しいポジション取りを迫られた。

「私は、モーガンに付いて行くしかなかったんですが、（熊谷）紗希は『スペースを空けてしまった。やはりあそこで打たせてはいけなかった』と言っていました。2トップに注意がいったところを抜け目なく、空いたスペースを利用され、男子のような世界レベルのシュートを決められた。2点目は取られないようにロッカーで話をしていたんですが、先に取られてダメージが大きかったです」

　岩清水は、悔しそうにそう言った。

　だが2失点して、動きが戻ってきたのはなでしこだった。

2点リードされてから、一気に攻め立てたなでしこだったが……。

　アメリカの中途半端な攻撃にも助けられ、中盤でボールを取り、保持する時間が長くなっていった。そうすると、攻撃のリズムも良くなった。

「うまくボールを持てて、左右に展開して、アメリカを揺さぶることができていたんで、このままこの攻撃が出来れば、いずれ点は入るなって思っていました」

　阪口夢穂は、その時点で試合の流れをこう見ていたという。

　その予想通り後半18分、宮間の縦パスから大野忍が横パスで澤へ。澤がシュートを放つとこぼれ球に大儀見優季が素早く反応しゴールに押し込み1点を返した。

　完全に息を吹き返した日本は、さらにボール保持率を高めながら攻勢を強めていった。

　決定的だったのは、後半38分だった。岩渕真奈が相手DFからボールを奪い、そのままGKと1対1に。狙いすまして打ったが、GKホープ・ソロのスーパーセーブに阻まれ、同点に追い付くことは出来なかった。

「あのシュートだけじゃなく、決定機はたくさんあった。アメリカは数少ないチャンスをしっかり決めて、私たちは決められなかった。その差がこのスコアだと思います」

　川澄は、淡々とそう振り返った。

【次ページ】　試合内容はドイツW杯の時より大幅に上回る出来だった。