プロ野球亭日乗BACK NUMBER
選手会が打ち出したWBC参加拒否。
“大人の事情”だらけの真相とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/08/06 10:30
2009年の第2回WBCでは決勝で韓国を下し、連覇を達成。日本中が歓喜に沸いた。果たして、あの興奮を再び味わう機会は訪れるのか。交渉の行方が注目される。
新たなファンを獲得する意味でもWBCの意義は大きい。
そして野球界全体にとっても、WBC2連覇は野球ファンの新たな開拓という点で大きなインパクトを与えるものだった。
WBCという大会を通じて、選手が日の丸の下に結集して、“世界”を相手に戦う。それが野球中継だけでなく、テレビのワイドショーやバラエティーなどでも取り上げられて、いわゆる野球ファン以外の人々を取り込む機会になっている。そうして新しいファンをつかんだ選手たちが、大会後には再び12球団に散って、新たな全国区のスターとして活躍する。
WBCには今の日本のプロ野球にとっては、お金に代えられない意味があることも、忘れてはならないわけである。
「本気で騒いでいるのは日本と韓国だけで、アメリカではまったく認知されていないエキシビションマッチでしかない」――こんなことを語る人もいるようだが、そんなことを真顔で論ずることにあまり意味はないと思う。
大切なのは、相手が真剣かどうか、ベストメンバーかどうかではなく(そもそもその基準すら曖昧なのだから……)、日本代表が真剣に戦って、勝ったというその事実だけだからである。
だから勝利の価値を貶める必要はまったくないし、過去2大会が、価値のないものだったなどと思う必要もまったくない。日本代表は素晴らしい試合をして世界一になった。その事実は誇りこそ持つべきもので、決して卑下する必要などないのである。
これがWBCの意味である。
労組である選手会は第3回大会への参加を頑なに拒否。
そしてこのWBCに労組・選手会が出場を拒否している。7月20日の臨時大会で3連覇のかかった第3回大会への不出場を決議し、8月1日に行なった12球団との話し合いでもその姿勢に変化はなかった。
主張は、大会運営会社のWBCIが日本企業のスポンサー権を独占することで「日本が本来持つべき固有の権利をMLBが奪い取る構図になっている」(週刊ベースボール8月13日号での新井貴浩会長の発言)ということだ。