MLB東奔西走BACK NUMBER
若き天才トラウトと苦労人トランボ。
好調エンゼルスを牽引する“光と影”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/08/08 10:30
弱冠20歳でメジャーのスタメン定着を果たし、新人王候補となっているマイク・トラウト(写真左)。一方、マーク・トランボ(26歳)は、マイナーを経験し、およそ6年かけてようやくメジャーの舞台に。お互いが刺激し合い、チームの好調を支えている。
「岩を砕くように叩き、爆弾のように遠くに運ぶ」
「今シーズンはじめにアナハイムに遠征にいったときだった。打撃練習中のアルバート(・プホルス選手)に話しかけにいったときに、ちょうどトランボが打撃練習していた。彼が大柄な男なのは知っていたけど、まるで岩を砕くようにボールを叩き、ボールを爆弾のように遠くに運んでいたんだ。現在ア・リーグで最もパワーのある選手かもしれない。とにかく印象的だった」
トランボをホームラン競争に選んだア・リーグのホームランダービー・キャプテン、ロビンソン・カノ選手(ヤンキース)は、その経緯を以上のように説明している。
チームメイトのプホルスも一目置く、天性のパワー。
これだけ聞くとさぞ筋骨隆々の肉体を想像するだろうが、実はそうではない。身長はカノが説明するように193センチと大柄だが、その上半身はムキムキの筋肉で覆われているわけではなく、むしろどちらかと言えば細身にも見えるその肉体に意外性すら感じるほどだ。
それでも7月30日現在、トランボの長打率(.599)がリーグ2位にランクしているように、こと打撃に関する彼のパワーは間違いなくメジャー屈指だ。長年メジャーの強打者として君臨し、今シーズンからトランボのチームメイトになったプホルスも彼のパワーに一目置き、こう語っている。
「彼は天性のパワーを有し、その使い方を体得している」
「自分のスイング」ができていることが好調の理由。
当のトランボは、今シーズンの活躍をどのように分析しているのだろうか。
「昨シーズンは相手投手についてもほとんど知らなかったし、とにかくファースト・ストライクを狙っていくように心がけていた。でも今年は多少なりとも相手投手を理解できたこともあり、カウントに関係なく自分のスイングをすることを心がけるようにしている」
7月30日時点でプホルスを差し置いて27本塁打、69打点とチーム二冠(しかも打率も.304と好打率をキープ)、正真正銘、主砲としての地位を確立している。