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欧州CL決勝に新時代の戦術を見た!
モウリーニョがインテルにかけた魔法。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2010/05/24 11:55
エトーとパンデフはサイドバック並みに自陣深く守る。
「足元へのパス」と聞くと、決勝トーナメント1回戦のチェルシー戦(第2レグ)のエトーの得点シーンを思い出す人も多いかもしれない。スナイデルのロングパスが、ピタリとエトーの足元に入り、決勝点が決まった。
基本的にインテルはボールを奪うと、ミリート、エトー、パンデフ、スナイデルの4人だけでカウンターを行う。4人とも世界でトップクラスの技術力を持つ選手だ。彼らがいることで、高速カウンターが可能になっている。
ここで注目すべきは、ミリート以外の3人のハードワークだ。
センターフォワードのミリートだけは守備の役目を免除されているが、エトー、パンデフ、スナイデルは、守備に切り替わると、自陣に戻ってブロックの一部にならなければいけない。特にエトーとパンデフは、まるでサイドバックのように自陣深くまで戻る。決勝戦後、モウリーニョは「常にエトーは、どのポジションでプレーしようが闘ってくれる」と感謝した。
テクニシャンがハードワークを遂行するインテルの凄さ。
“一流”のテクニシャンが魅力的なサッカーをしようとしたバイエルン。それに対し、“超一流”のテクニシャンがハードワークをしたインテル――。もし出場停止のリベリが決勝に出られたとしても、結果は変わらなかったに違いない。インテルは2対0で勝利し、45年ぶり3度目の優勝を達成した。
セリエA、国内カップ、CLの3冠を獲得したモウリーニョは、来季はレアル・マドリーの監督になることが濃厚になった。
はたして、この47歳の戦術家は、レアルのスーパースターたちを鍛え上げて、ハードワーク路線を続けるのか。それとも新たなスタイルを発明するのか。
来季のCLも、このポルトガル人監督を中心にまわることになりそうだ。