引退の決断は「新しい挑戦をしたいという直感に従った」。

　しかし、1月の時点では所属クラブがなく、インタビューの最後に“今後”について聞いても明確な答えは返ってこなかった。やはり40歳という年齢が、“あの頃”の感覚を持ち続ける藤田にとって、大きな足かせとなっているように感じられた。

　あれから約半年、引退発表の記者会見からちょうど1週間が経過した7月10日の深夜、受話器の向こうにいる藤田に決意に至るまでの経緯と心境を聞いた。

――すごく難しい決断だったと思います。

「やっぱり、単純ではないよね。そこにはいろんな葛藤があってさ。でも、最後は新しい挑戦をしたいという直感に従っただけ。俺は現役時代から自分の感覚、感性に従って動いてきたから。ただ思うままに、そう決めたということだよね」

――プレーヤーであることにずっとこだわってきた藤田さんが、最終的にピッチから離れる決意を下した理由は何だったんですか？

「選手としての一番の喜びは、やっぱり自分のイメージがプレーで表現できることだよね。もちろん、年齢とともに体が衰えるのは当然のことだし、俺自身、自分の体のトップパフォーマンスも32、3歳の頃だったと思う。だから、どこかでそのギャップを感じていながら、現実的には感じないようにしていたのかもしれない」

――でも、そのギャップを感じる必要がないほど、サッカーを楽しめていたということですよね。

「そう。プレーしている時は、その中で楽しさを見つけるから。ケガさえなければ、俺はいつも楽しくサッカーをやれた。それは自分が何歳でも変わらない」

サッカーにかかわり続ける延長線上に監督がある。

――監督を目指すという決断は、少し意外でした。

「選手でいるうちは、選手である自分のことしか考えてない。だから、監督になるための準備をしてきたわけじゃないよ。ただ、いろんな流れの中で、自分にもそういうチャンスがあるということを知ったんだよね。だからあくまで、選手としての延長線上にあるという感覚に近い。

　ただ……監督をやるっていう強いイメージは、まだないよね。というより、このままサッカーを続けるという感覚。もちろん仕事は違うけど、俺の中では、サッカーに携わる自分は変わらない。どんなキャリアを歩むにしても、最終的には“自分が何をしたいのか”が大事だよね。それさえ決まれば、自分がやってきたことが生かされる。それはきっと、『いい選手になりたい』と思って努力するのと全く同じだと思うから」

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