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松坂大輔の球速は増したが……。
ボストンでプレーできる残り時間は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/07/09 10:31
「チームの負担にならないように投げたいのだけど……なかなかできない状態ですね」と故障者リスト入りに際してコメントした松坂。大手術後の復帰をかけて戦う松坂だが、メジャー生き残りをかけての残された時間はあまりにも少ない。
オールスター明けの2カ月間が松坂にとっての正念場。
このままの状態が続けば、レッドソックスとしては使いようがなく、ケガの回復を待つという悠長なことも言ってはいられない。
ポストシーズンを狙える位置にいるため、先発の補強が急務なのだ(外野手が余っているので、商材には事欠かない状態)。もし、先発にビッグネームが加入したりすれば、松坂の働き場所はますます限られてしまう。
そうなってしまうと、来季の契約交渉にも大きな影響が出てしまう。その意味では、8月、9月は「オーディション期間」なのだ。今後のメジャー生活を懸けた2カ月間といってもいい。
数少ない明るい兆しは術後に伸びたストレート系の球速。
それでも明るい材料はある。松坂はまだまだやれるはず──そう思うのは、昨季に比べ、トミー・ジョン手術明けの今季の方が平均球速が伸びているからだ。(球速はマイル表示、fangraphs.comによる。カッコ内はキロ表示)
・ストレート 90.3→91.2 (145.2→146.7)
・スライダー 79.8→80.7 (128.3→129.8)
・カッター 89.2→89.8 (143.5→144.4)
・チェンジアップ 79.4→80.6 (127.7→129.6)
特にストレート系のボールが1マイル(約1.6キロ)近く球速が上がっているのは、好材料ではないか?
以前からトミー・ジョン手術後は球速が伸びるとはいわれていたが、松坂にもそれは当てはまっている。あとは万全の体調、制球力が戻ってくれば、十分に戦力になるはずなのだ。
いい投球をするきっかけが欲しい。1試合でもクオリティ・スタートができれば、ポストシーズンをにらんだ投球ができるのではないか。
ただ、落ちついて投球ができないのも事実で、不運なのはボストンのメディアが松坂に対して厳しいことだ。