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松坂大輔の球速は増したが……。
ボストンでプレーできる残り時間は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/07/09 10:31
「チームの負担にならないように投げたいのだけど……なかなかできない状態ですね」と故障者リスト入りに際してコメントした松坂。大手術後の復帰をかけて戦う松坂だが、メジャー生き残りをかけての残された時間はあまりにも少ない。
松坂大輔が、ピンチだ。
7月2日のアスレチックス戦で1回3分の0を5失点、わずか28球を投げたところで降板し、そのまま故障者リスト入りとなってしまった。
アスレチックス戦の前の遠征先であるシアトルで、すでに背中の張りを訴えていたため、ブルペンでの練習を回避していたが、メジャーでは万全の状態でマウンドに上がらないと、手痛い目にあってしまう。アスレチックスは球場が広いこともあって得点力の高いチームではないのに、痛打されてしまったのは、どうしても印象が悪くなってしまう。
レッドソックスとの契約最終年の松坂に吹き付ける逆風。
日本のメディアはなかなか指摘しないが、今季は松坂にとってレッドソックスとの6年契約の最終年にあたっており、このままの状態では来季の再契約が結ばれることは考えられない。
成績だけではなく、球団の内部事情も松坂にはアゲインストだ。
レッドソックスは今季からGMが変わったが、新任のGMというのは数年かけて前任GMの「案件」を外に出していくものだ。たとえばマリナーズの場合、ズレンシックGMに交代して4年目に入っているが、前GM時代からの選手はほとんど残っていない。主力で残っているのはイチローとエースのフェリックス・ヘルナンデスだけだ。
GMとは、自分の色でチームを染めたくなるものなのだ。
松坂はエプスタイン前GM(現カブス球団社長)の目玉案件だっただけに、チェリントン新GMは十中八九、松坂との再契約には興味を示さないだろう。
このままでは「ホットな商談材料」にすらなれない……。
すでに6月の段階でアメリカのメディアは、「ケビン・ユーキリスと松坂をセットでトレードに出すのではないか?」と憶測していた。人気選手だったユーキリスは、ケガで戦線を離脱している間に新人にポジションを奪われ、あぶれた形になり、結果的にホワイトソックスにトレードされた。
松坂が一緒に移籍することはなかったが、オールスターまでに「クオリティ・スタート」(6回を自責点3以内に抑える先発結果のこと)を続けていれば、松坂はレッドソックスにとって「ホットな商談材料」になる可能性があった。
しかし、7月上旬に故障者リストに入るのは、いかにもタイミングが悪い。トレード期限の7月末までに内容のある投球を披露する機会があるかどうか……。