野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
日本一諦めきれない男の人生──。
古木克明は今もオファーを待っている。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKatsuaki Furuki
posted2012/05/03 08:02
日々自らの身体に鞭打つようにして激しいトレーニングを続けている古木克明。古木ファンならば……ツイッターの@furukiktakとフェイスブックをチェックすべし!
あれから8度目の“古木記念日”がやってくる──。
そんな悩みを抱えたまま、今年もまたこの季節がやってくる。
溢れんばかりの才能が輝きを放ち、目の前には素晴らしい未来だけが広がっていると信じられた2004年5月4日の巨人戦。決勝本塁打を放ったあのお立ち台でスター性を如何なく発揮したミラクルインタビュー。某歌人風に諳んじるならば、
「こどもの日に打ててすごく嬉しいです」と君が言ったから5月4日は古木記念日。
あの日、あの時から8度目の春。
紆余曲折がありまくり、期待された日本を代表するホームランバッターにも、ポスト松井秀喜にもなれてはいないし、本人すらもよくわからなくなっている数奇な野球人生。
現段階で所属球団はなし。交渉してくる球団もなし。仕事も肩書きもなし。金もなし。
だが、どの時代の古木よりも現時点の古木がプロ野球選手としての誇りを最も持っているように、不器用でちぐはぐで、うまくいかずとも愚直に足掻き続けるその様こそが古木らしく、またその野球人生に未だにヤキモキさせられ続けているのが、嬉しくもあり、悲しくもあり。
登山家を目指さぬ限り、古木は再びグラウンドに立つ!
冷静に考えれば、世の中のほとんどの人間が「もう終わった選手」と見ているのかもしれない。筆者とて、どこに落としどころをつけるのか、そればかりを考えてしまっているところがある。それなのに、古木だけは、諦めなければ本気でプロ野球に復帰できるものだと信じている。もう一度スポットライトを浴びてホームランが打てると信じている。今頃になってやっとそんなこと、言いだして、何やってんだよ。ホントに。
諦めなければ夢は必ず叶う。
そんな言葉が嘘っぱちだってことは皆知っている。なのに、古木はやる。バカと言われてもやる。一般人から見ればとてもバカなことなんだけど、やる。
昔から良くも悪くも常識人ではできないことを、いとも簡単にやってのける。それが古木克明である。
普通に考えれば復帰は絶望的である。だが、古木なら、「登山家になります」とか言い出さない限り、必ずやこの難局を乗り切って、グラウンドに帰ってくる。
それが、古木だからだ。
最後に球団関係者の方々。給料ゼロでいいそうです。グッズの売り上げもそれなりに見込める左の大砲。育成枠でも獲得を検討されては如何でしょう。古木は今この時も待っています。
刺激のないスタジアムに、そのガンコな貧打線の解消に、古木忘れていませんか。