いまなら受け入れられる「豚朗」事件の天然キャラ。

「時間の感覚がおかしいんですよ。プロ野球の11年間は本当に早かったですけど、この3年は密度が濃すぎたのか、ものすごく遅く感じますし、人間的に試されてきたような気がしています。

　今、外から野球界を見て足りないものがなんとなくわかるんです。選手のキャラやパフォーマンスっていいますけどね。難しいですよ。僕だって前の横浜時代にはタクローさんへの年賀状に『石井“豚”朗』と書いたことや、牛島監督のウインナーを取ったことをネタにされるのも嫌でした。プライドは高かったし、かっこよくありたいと思っていましたから。でも、辞めてからわかるんです。『豚朗』の話もウインナーの話も、僕のキャラクターを生かそうと周囲があえて伝聞してキャラを確立してくれたこと。何をしても誤字脱字ばかりしているみたいな扱いが昔は嫌でしたけど、今はこれでいいんだって思えるんです。

　バカでも何とも言われても、お客さんが喜んでくれるならそれでいい。僕の場合はあえてやろうとしなくとも、自然にパフォーマンスになってしまう。それが大きな武器なんでしょうけど（笑）」

　意図せずとも勝手に何かのミラクルを起こしてしまう能力。人はそれを多分スター性と呼ぶ。

「どこが限界かわからないけど、倒れるとこまで行く」

　しかし、そんなものを大量に持ち合わせるスターも、然るべき舞台が与えられなければ、やたらガタイのいい野球好きの無職のオッサンである。不憫過ぎる。どうにかならないものか。

「まだ始まったばかりという気もするし、もう時間がないとも思いますが、今はひとつひとつの段階で考えるようにしています。2月1日まで全力で頑張ったけどダメだった。それなら7月31日まで全力で頑張る。今年のトライアウトを受けるとか、その先のことは考えていないですよ。その時の状況、マラソンじゃないけど、『次の電柱までは頑張ろう、まだやれた、じゃあ次の電柱まで』という感覚と同じです。ただ、僕の背中を押してくれる人たちの気持ちに応えるためにも絶対に諦めない。着地点なんてわからないし、どこが限界かわからないけど、倒れるとこまで行きますよ」

　諦めない。どこまで行けば「最後まで諦めずにやれた」といえるのだろう。来年か再来年か、それとも死ぬまでだろうか。

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