野球クロスロードBACK NUMBER
かつての輝きを取り戻せるか?
復活した和田毅が信じてきたもの。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/04/21 12:55
まずはストレートを完璧に。すべてはそこからだった。
150kmを超える速球はない。だが、相手打者をして「球の出所が見えにくい」と言わしめる独特のフォームを最大限に生かせる球種は、やはりストレートなのだ。和田自身、「真っ直ぐをしっかりと投げられないと」と言っていただけに、そこに納得できないうちは前には進めない。その妥協なき姿勢は充分に伝わってきた。
とはいえ、時間は待ってくれない。シーズン開幕直後の和田は、まだ本調子ではなかった。
初登板となった3月26日のオリックス戦で、カブレラに逆転2ランを浴びたボールはストレート。好調であれば胸元を鋭く突くクロスファイヤーが見事に決まっていたはずだが、打たれたのは真ん中高めに浮いた失投。これには本人も、「甘かった」と反省した。続く4月1日の西武戦でも、今季初勝利こそ手にしたが5回4失点だった。
「今年もダメか」と不安も募るところだが、8日のロッテ戦では、それまでの内容が嘘だったかのように和田の投球が冴え渡る。
4安打1失点の完投勝利。自己最多の15奪三振もマークした。ゲーム後、「三振のことは考えていなかったが、フォームがすごく良かった。すべてがハマった」と自画自賛するほど圧巻の内容だった。そして、15日のオリックス戦では、前回よりも内容は良くなかったが粘りの投球ができた。
明日の西武戦先発がシーズンを占う試金石になる!!
この2戦の原動力となったのが、言うまでもなくストレートだった。歩みは遅くとも、着実に準備してきたものが、ここにきてようやく実を結んだ。
ただ、「2ケタ勝利は確実だ」と安心するにはまだ早い。先発予定となっている22日の西武戦。ここは重要だ。言うなれば、シーズンを占う試金石ともとれる一戦になるだろう。好投すれば、月間MVPに選ばれる可能性だって充分にある。
前回打ち込まれている相手だけに油断は禁物だが、だからといって変化球主体の投球ではつまらない。
やはり、西武打線にストレートで真っ向勝負を挑む和田の姿を見てみたい。