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“松田魂”を受け継ぐ栗原勇蔵。
代表レギュラー奪取に懸ける決意。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/01/25 10:31
松田直樹メモリアルゲームでプレーする栗原勇蔵(写真左)。マリノスではこれまで、井原正巳、小村徳男、松田直樹、中澤佑二と日本を代表するCBを輩出してきた。栗原は、その名誉ある系譜に名を連ねることができるか?
“全力”を出し切って、松田の死を乗り越える。
尊敬した松田がこの世を去り、栗原は一時期「ユーチューブ」で松田のプレーを探すようになっていた。画像を見ながら松田の溢れ出るような闘志に触れていた。
栗原は今こそ自己改革のときだと覚悟している。
「2012年のテーマは『全力』なんです。ここずっと(試合では)自分の力を抑え気味にやっていたように感じていたし、やっぱりそれじゃいけない。常に全力でやっていかないと、自分のレベルもアップしていかない」
人並み外れた筋力の持ち主は、ケガを怖れて自分の力を無意識でセーブしてしまうところがあった。しかしそれでは上に行けない。松田の存在を「超える」ことはできない。レギュラーの座を奪い返せていない代表で当落線上の戦いが続くなか、今年こそ勝負を懸けなければならない――。松田の死というショックを乗り越え、栗原にはその思いが強くなっている。
「激しいぐらいの熱さは、絶対に捨てちゃならない」
この日、天国から見守った松田直樹は、栗原に何を語っただろうか。
以前、松田からディフェンダーとしてのポリシーを聞いたことがある。
「冷静さは大事だけど、熱くあってこそ自分。相手を吹っ飛ばすぐらいの迫力は必要だし、死んでも止めてやるぐらいの気持ちでプレーする。激しいぐらいの熱さというのは、絶対に捨てちゃならない」
熱く、激しく。
“松田魂”を胸に秘める栗原は、晴れ上がった空を見上げていた。