スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
モウリーニョの敗北と復讐計画。
~バルサ圧勝のクラシコを振り返る~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/12/21 10:31
シーズン前半戦終了時点で、勝点37のバルサに対し、勝点40でレアルはとりあえず首位に立つ。モウリーニョ(左)にぺップ・バルサを倒す秘策はあるか
「今度こそは」と思っていたが、「今度もやはり」に終わってしまった。
2011年12月10日のエル・クラシコ。レアルは、またしてもバルサに敗れた。それも、完敗である。この夜のモウリーニョは、采配の冴えを見せることができなかった。いかにモウリーニョ贔屓の私とて、これではペップ・グアルディオラに脱帽せざるを得ない。
ご承知のとおり、レアルは試合開始21秒で先制点を挙げた。バルサのGKビクトル・バルデスがとんでもないポカを犯し、あっさりと1点を献上してしまったのだ。
が、この先制点はすぐに霞む。前半30分、ピケからボールを受けたメッシが、4人を抜き去る形で中央に切れ込み、ボックスのすぐ外にいたアレクシス・サンチェスにきれいなスルーパスを通したのだ。アレクシスが決めて、試合は振り出しに戻る。
というより、ここでバルサはモメンタムをつかみ、レアルは落ち着きを失った。前半45分は同点のままで終わったが、ペップは勝機を見逃していなかった。後半がはじまるとすぐ、右のサイドバックにいたダニ・アウベスを思い切って前に出してきたのだ。
ブーイングの嵐に包まれた……サンチャゴ・ベルナベウ。
お、スリーバックか。観客は一瞬そう思ったにちがいない。
センターバックのプジョルが右へ動き、クリスチャーノ・ロナウドと向かい合う恰好になった。左サイドのアビダルはそのまま。CBはピケ一枚かと思ったが、守備的ボランチの位置にいたブスケツが下がってきた。形としては4-4-1-1に近い。
このフォーメーション変化が功を奏した。
というよりも、モウリーニョが対策を見つけられなくなった。アウベスは何度も攻め上がりながら、レアルの左サイドに位置するマルセロの攻撃参加を防いだ。ロナウドはプジョルに封じられて、まったく精彩を欠いた。後半19分などは、シャビ・アロンソのクロスを完全にフリーの形で受けながら、簡単なヘディングを外してしまう始末だった。
サンチャゴ・ベルナベウは、当然、ブーイングの嵐に包まれる。