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サヒンに代わる司令塔役は誰だ?
連覇をねらうドルトムントの試行錯誤。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byItaru Chiba

posted2011/07/18 08:00

サヒンに代わる司令塔役は誰だ?連覇をねらうドルトムントの試行錯誤。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

ブンデスリーガ連覇に向けて、5人の新加入選手を獲得。怪我で昨季後半は戦列を離れた香川も“6番目の新加入選手”として期待されている

昨季11アシストのゲッツェは司令塔役に適任だが……。

 今年3月にドイツ代表デビューを飾ったS・ベンダーは、ハードワークを売りにするクロップ監督のサッカーに欠かせない選手になっている。昨季後半戦、リハビリを終えてドイツに戻ってきた香川は、こんなことを語っていた。

「あいつはもう、外せないよね。(攻守に)めちゃくちゃ効いている」

 試合展開によって守備的MFを務めたことがあり、一部のファンがサヒンに代わる司令塔として期待するゲッツェは、確かに昨季はチーム最多の11アシストをマークしている。彼ならばサヒンの位置でプレーすることも可能に見える……。

 しかし、今季のゲッツェは、明らかに違っている。周りを使う選手から、独力で状況を打開できる選手へと変貌を遂げつつあるのだ。実際、昨シーズンから、全体練習の後に香川の通訳の山守氏を相手にドリブルの特訓を続けていたが、プレシーズンマッチで執拗にドリブルをしかける姿は鬼気迫るものがある。彼は守備的な位置ではなく、もっと高い位置で勝負することになりそうだ。

トップ下の香川についてはCEO、監督共に太鼓判を押す。

 そして、香川はどうか。今季はじめての実戦では3ゴール、1アシスト。それ以降ゴールこそ生まれていないが、「怪我をする前と遜色のないプレーを見せている」とバツケCEOが興奮気味に語れば、「すでに普通にプレーしている。心配はいらない」とクロップ監督は太鼓判を押す。

 香川以外にトップ下で起用されているのが、将来を嘱望されながらもゲッツェやライトナーに比べると小物感の否めないル・タレックだという点も注目に値する。昨季の後半戦を怪我でほぼ棒に振ることになった香川が焦らないようにクロップ監督が配慮しているのではないだろうか。

 実際に、他にもトップ下を務められる選手はいるのだが、ここまでは香川かル・タレックが起用されることがほとんどだ。

期待感は十分な香川とゲッツェのコンビネーション。

 7月12日、スイスリーグの2部に相当するチームとの練習試合が行なわれ、ドルトムントの各選手は、一様に45分ずつプレーする機会を与えられた。香川は前半に、ゲッツェは後半にプレーしたため、一緒にピッチに立つことはなかったのだが、ドルトムントの番記者たちがつめかけた記者席の様子が微笑ましかった。

 香川が活躍すると、「これでゲッツェと一緒にプレーすればすごいことになるなぁ」と記者たちは話し始め、ゲッツェがスーパープレーを見せれば「シンジと並んだら、誰も止められないぞ!」と唾も飛ばさんばかりに興奮していたのだ。

「香川とゲッツェが中央と右サイドで絡み合う。そんなシーンがクロップ監督のお気に入りなのだ」と『WAZ』紙も伝えている。

「でも、まだ誰がトップ下(のレギュラー)になるのかは、わからない。これから頑張らないと」

 そう語る香川に、慢心はない。周囲を納得させるだけの「結果が欲しい」と口にする。

【次ページ】 変化を余儀なくされた王者にあるのは進化か、停滞か?

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