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遠藤保仁の“凄み”とは何なのか?
天皇杯に和製シャビ・アロンソを見た!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byToshiya Kondo
posted2010/01/06 12:40
加地も驚いた、遠藤の「滅多に見せない個人技」とは?
動き出しの早さだけではない。
1点目のゴールでは、加地亮が「滅多に見せない個人技」と驚いたテクニックで観衆の度胆を抜いた。後から二川孝広を追越し、彼からのパスを爪先で受けると、その刹那一人かわし、さらにドリブルで2人目をかわし、左足で振り抜いて決めた。
驚くべきは、ボディバランスの良さとシュートの巧さだ。
やや低い重心で、軸は左右にブレず、体は流れるように動いていた。自分の距離でボ-ルをコントロールし、フィニッシュはタイミングを見計らって逆サイドを狙った。
「メッシみたいなゴールだな」と言うと、「メッシよりも凄いでしょ」と笑ったが、その言葉に値する本当に美しいゴールだった。
「今のサッカーは2列目、3列目の飛び出しがすごく大事」
「一人かわした時点で、ドリブルでかわしてシュートというイメ-ジはできていた。まぁ最後のシュートの場面はパスする選択もあったけど、打たないと始まらないからね。でも、世界だとあそこでDFの足が出てくるだろうから、それは意識して打った」
これもシャビ・アロンソやオランダ戦など、世界レベルの戦い方から影響を受けての判断だったのだ。
「外国人は、ちょっと隙間が空くとすぐに打ってくるでしょ。オランダ戦のスナイデルのシュートもそうだったからね。だから、俺も打てるチャンスがある時はできるだけシュートで終わろうと思っている。あと、今のサッカーは2列目、3列目の飛び出しがすごく大事。長い距離を走れば走るほどフリーになれるし、そこで一瞬でかわす動きが出来れば、さらに得点に繋がるチャンスが広がる。そうしないとW杯じゃ点取れないんでね」
「あんなの入るかなというシュートだった」と語る松代。
最後を締めた2点目のゴールは、動き出しの早さ、高い技術、冷静さ、決定力と遠藤の凄さを凝縮した一撃だった。2列目からフリーで飛び出してボックス内に侵入。完璧な胸トラップでボールをシュートポイントに置き、血も凍るような冷静さでGKの動きを確認し、コースを狙って決めた。松代が「あんなの入るかなというシュートだった」と驚くのもうなずける、完璧なゴールだった。