プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「空振り」の打撃術。
~イ・スンヨプ、劇的復調の理由~
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/05/21 06:01
イチローにとっての「いい空振り」とは?
打者にとってはマイナスの結果のはずの空振りも、自分を映す鏡になれば大きな意味がある。このことにイ・スンヨプが気づいたことと、5月に入って上昇線を描き出したことは無関係ではなさそうだ。
「やっと空振りができるようになった」
空振りでもう一つ思い出すのは、シアトル・マリナーズのイチローのこの言葉だ。
打ちにいって打つべきボールではないと判断したときに、打者にはカットという手段がある。わざとファウルを打つのだが、バットとボールが当たれば、凡打になってしまうこともある。そのリスクを無くすために打とうとしても、わざと空振りできるようになった、というのがイチローのこの発言の趣旨だった。
一度は「打つ」という意思で振り出したバットを、わざとボールに当てない――これもまた高度な技術に裏打ちされた「いい空振り」ということになるのだろう。