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W杯開幕戦で実感した、
モーグル日本チームの充実。
~里谷多英も代表確実に!~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byHiroyuki Sato/AFLO
posted2009/12/23 08:00
里谷多英は1998年の長野五輪では、女子として史上初となる冬季五輪金メダルを獲得。2002年ソルトレイクシティ銅メダル。トリノで15位の成績を残す
フリースタイルスキー・モーグルのワールドカップがフィンランド・スオムで開幕した。
本来の初戦は12月12日だったが、第2戦のフランス・メリベル大会が雪不足のために中止。急きょ、11日にスオムの会場で代替分を実施することになり、1日開幕が繰り上がることになった。
注目されたのは、まずは採点の傾向がどうなるかという点にあった。モーグルの得点の割合はターンが50%、エアが25%、タイムが25%となっている。ターンが半分を占めているのだ。昨シーズン、上村愛子が世界選手権2冠に輝いたが、上村の強さはターン点の高さにあった。
ところが今シーズンが始まる前、ターンの採点基準を緩和する方向が打ち出されたのだ。単純に言ってしまえば、上手い、下手でこれまでほど差がつかないようにしようということだ。
これはターン技術の高い上村にはプラスにはならず、マイナスにしか働かない、強みが薄れるのではないかと懸念が出ていた。
実際、大会が始まってみると、これまでよりは技術レベルに応じて差をつけなくなった感はあるとはいえ、そこまで心配する必要はなさそうに思えた。上村自身、「しっかり滑れば点をつけてもらえる」と、手ごたえを感じることができた。むろん、試合会場が変わり、大会が進まなければ今シーズンの傾向は把握しきれない点もあるが、まずは大きな問題はなさそうに思える。
里谷多英と附田雄剛。33歳のベテランふたりがみせた存在感。
このような背景のもと、行なわれた2試合で、日本のモーグルチームは、まずまずの滑り出しを見せた。
上村は初戦で2位。2戦目こそ、エアの着地を失敗して予選落ちしたものの、上記のとおり、本人も納得の行く大会になった。
目をひいたのは、女子の里谷多英、男子の附田雄剛の両ベテランだった。里谷は2戦続けて決勝に進出。全日本スキー連盟関係者によると、五輪代表を確実なものにした。附田は初戦は予選落ちしたものの、2戦目は決勝でどの選手よりも気合いをみなぎらせてスタートすると、迫力ある滑りをみせて6位入賞。2試合通じて日本男子では最高の順位を記録し、五輪代表に近づいた。
2人はともに33歳。バンクーバー五輪に出場すれば、里谷は5回目、附田は4回目を数える。日本のモーグル界を支えてきた存在である。
里谷は五輪代表内定者で若手の伊藤みきに対して、附田もやはり五輪代表内定者で若手の西伸幸に対して、成長著しい若手に追いやられるベテランのように見えた時期もあった。
だが、五輪シーズンが幕を開けて、あらためて日本のモーグルを支えてきた選手ならではの力強い存在感を示した。