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クロマティの右ストレート、一閃!
巨人対中日。忘れられない乱闘劇。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/07/29 13:15
ふだんは愛嬌のあるクロマティだが、怒ると表情が一変。マウンドに駆け寄ると、ボクサーばりのストレートを宮下の顔面に叩き込んだ。
一触即発の緊張感こそがライバル対決の魅力である。
ただ、それだけでもないだろう。球団間の移籍が昔よりも盛んになり、監督の落合博満や川相のように他球団の選手の血が入ったことも大きいに違いない。ましてや、二人は元巨人だ。昔の中日の選手のように巨人に敵対心を持てといっても、それはなかなか難しい注文だろう。
川相は、中日に入ったとき、中日の選手のイメージと現実のギャップに戸惑ったという。
「星野さんの時代の荒々しくて、ケンカっぱやいイメージとはほど遠かった。普段は非常に大人しいんですよ。それでいて、試合になるとさりげなく力を発揮する。むしろ、スマートなイメージだった。今でも、俺の方が反応するの早いぐらいだからね。危ない球がきたら、気づくと(ベンチから)何歩か出てる。で、後ろを見ると、誰も出てきてない。俺は何しとるんやって」
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願ってもないことに、今季はここにきてセ・リーグは巨人と中日のマッチレースの様相を呈してきた。両チームが熱くなる状況としては申し分ない。
もちろん、乱闘を見たいとまでは言うつもりはない。だが、多少なりとも「見せる」ことを意識するのであれば、巨人対中日というカードが持つ、ある種の「きな臭さ」のようなものだけはいつまでも残しておいて欲しいものだ。