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「変わる」ものと「変わらない」もの。
~ドイツサッカーの魅力とは~ 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2009/06/24 06:01

「変わる」ものと「変わらない」もの。~ドイツサッカーの魅力とは~<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

オリバー・カーンの引退により、ドイツ人以外で初めてバイエルン・ミュンヘンのキャプテンに就任したマルク・ファン・ボメル(左)。ドイツサッカーを牽引し続けたバイエルンを'01年以来のチャンピオンズリーグ制覇に導けるか

 7年間続けてきたこのコラムも今回で最終回となった。02年10月の記念すべき第1回目のテーマは「カイザースラウテルンの降格危機」。シーズン序盤だというのに早くも残留に黄色信号が出ていたことをレポートした。文字数は700字という短さだった。2年後の04年7月あたりから1000字に増やし、最近は2000字くらいを目途に書き続けてきた。

 これまで扱ったテーマは多岐に渡る。代表チーム、各クラブ、選手、監督、GM、外国人、移籍、スタジアム、チケット、観客数、マスコミ報道、マーケティング――。私的に創設した「ドイツサッカー大賞」が結構ウケていた……というのは手前味噌。書き上げた原稿の数を調べてみたら、123本あった。よく書き続けたものだ。

7年前、欧州サッカーは「3大リーグ」になっていた!?

 7年前を振り返ってみたい。あの頃のドイツは極度の不振に喘いでいた。日韓W杯で予想外の準優勝を果たしたものの、代表チームの実力低下は著しく長期低迷状態になかなか歯止めがかからない。しかし、04ユーロで底を打ったチームはただちに組織と指導者を大幅に入れ替え、その結果、わずか2年という短期間で完全復活を遂げた。その後も個々の実力を合わせた以上の優れたチーム作りをしてきている。この底力がスゴイのである。だから史上何度もタイトルを獲得できた。スペインじゃ真似できない、と密かな自信もあったが最近の情勢では反論できないところが悔しい。

 クラブに目を転じれば、01年にバイエルンがチャンピオンズリーグ(CL)に優勝、そして翌年はレバークーゼンが準優勝してブンデスリーガ復活の機運が高まったようにも見えた。だがその後の展開はサッパリ。CLはバイエルンを除くチームがグループリーグで消滅するパターンが続く。

 そんなどん底からのコラムのスタートだったのである。日本のマスコミが「4」ではなくて、「欧州3大リーグ」という呼び方を自然な感じで導入したのも頷ける。ドイツが蚊帳の外に置かれることで奇妙な感覚に襲われたが、結果が全てのこの世界では「彼らがいるじゃないか!」と叫んでみたとて、弱者の声なき声でしかない。過去へのリスペクトは忘れ去られたのだ。

ドイツサッカーで変わったもの、変わらないもの。

 7年間でブンデスリーガが大きな変化を遂げたものに、マネーへの意識がある。「ケチこそ美徳」のようなルールと価値観に縛られていては国際競争で勝てないのが分かり、バイエルンのリベリーとゴメスの獲得で支払われた高額移籍金やホッフェンハイムとヴォルフスブルクの青天井の予算が、旧来のドイツ的常識を覆した。国も個人も金持ちなのに、サッカーのマネーの部分となると途端に控え目になる。そんな必要ないぞ、と思っていただけにまさに時代の変化を感じるところだ。

 反対に変わらない点は、ゲームの単調な戦法、テクニックの軽視、選手の海外移籍の失敗などだ。特異なチーム、天才選手にまったく歯が立たない点で、ドイツサッカーは解決の糸口を探ってほしいと思う。そしてバラック、メッツェルダー、ヒンケル、ヒルデブラント、フートである。国家を代表する彼らの中で、いったい誰が海外で大活躍しているだろうか。憧れのチームに移籍してブレークした選手がいない理由を関係者はもうちょっと真剣に考えたらいい。国内で一流の彼らが通用しないのはドイツサッカーの問題点を具体化しているということなのだから。

【次ページ】 ドイツ再興の原動力は、国民に根付いたサッカー文化だ。

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