Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
オランダ代表監督・ファンマルバイク 「我々にとって日本はやりやすい相手だ」 ~南アW杯対戦国研究~
text by
若水大樹Daiki Wakamizu
photograph byYuichi Masuda
posted2010/01/29 10:30
'08年7月よりオランダ代表を率いるファンマルバイク監督
“怖い”本田が日本代表では実力を発揮できない原因とは?
言われてみれば今回の取材で『面白いサッカー』という評価は多かったが、『強い』や『怖い』という表現は聞かなかった。
右SBのファンデルビールと競り合う本田。代表ではまだ本領を発揮できず
オランダリーグでは“怖い”存在として扱われている本田に対しても同様である。フェンロでの活躍とは違い代表では結果を残し切れていない。2部時代から注目し、「素晴らしいプレーヤーだ」と、たびたび絶賛するほど“オランダ”の本田を知っているファンマルバイク監督なら原因を解明できるかもしれない。
――なぜ本田は日本代表では活躍できないのだと思いますか?
「まず代表では彼のポジションが違う。あれは彼のベストポジションではない。本田はトップ下のもっとゴールに近い位置でプレーするべきだ。オランダでは選手のいいところをできるだけ使おうとする。日本とオランダのサッカー観の違いだろう」
フェイエノールト時代、ファンマルバイク監督がチーム編成論について語っていた言葉を思い出した。
「チーム編成はパズルのようなもの。ピースはさまざまな特徴や欠点の凹凸がある選手たちだ。この凹凸をうまく合わせて絵を作り出すのが監督の仕事。無理やり凹凸を削ってはめても特徴のあるチームは作れない」
対戦相手に合わせて柔軟に選手構成を変えることを得意とし、オランダを常勝軍団へと変貌させた監督の基本理念だ。きっとフェンロのように本田の凹凸を生かしたチーム編成の方法もあると言いたいのだろう。
日本の目標を聞くと、ファンマルバイク監督は一笑に付した。
「日本はW杯でも十分活躍できる可能性があると思う。アウトサイダーとして注目したい」と最後に言ってくれたが、これだけいろいろと指摘された後ではリップサービスにしか聞こえなかった。
南アフリカの抽選会では岡田監督がファンマルバイク監督に忘れられていたと帰国後に怒っていたようだが、オランダのメディアは日本を問題視していない。記者たちにグループリーグの結果予想をしてもらうと、日本は8割方4位に挙げられた。彼らが危険視するのはポルトガルやスウェーデンを打ち破ってW杯に出場したデンマークで、日本戦は単なる通過点に過ぎないと思っている。そんな日本代表の目標がオランダと同じくW杯ベスト4進出なのだと言うと軽く失笑されてしまった。