日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
平山相太が見せた守備力&走力。
長身FW加入で日本代表が変わる!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKiminori Sawada
posted2010/01/13 10:30
以前は運動量の少ないストライカーと言われていたが、FC東京移籍後はそのキープ力を活かしたポストプレーに磨きをかけた
イエメン戦で見せた平山相太のパフォーマンスは、岡田武史監督にとって“うれしい誤算”だったはずである。
国際Aマッチのデビュー戦でハットトリックを達成したのは、日本代表では実に80年ぶりという快挙。指揮官も試合後に「3点はものすごく評価すべきだ」と語り、代表キャンプ(1月下旬~、鹿児島・指宿)への招集をにおわせている。
だが“うれしい誤算”と書いたのは、このハットトリックを指しているのではない。サヌアの地で披露した彼の高レベルな守備、運動量こそが、指揮官を何より驚かせた要素だったように思う。
岡田監督が平山より渡邉をスタメンに起用した理由とは?
「しつこく守れない、高い質で走れない」という平山に付きまとったかつての負のイメージはそう簡単に払拭できるものではない。だからだろうか、岡田監督はイエメン戦のスターティングメンバーに平山を選ばなかった。代表初選出が大半を占めるチーム構成と不慣れな2000m級の高地というアウェーの環境を考えれば、思いどおりに試合を進めることは難しい。おそらく指揮官はドローでもOKという覚悟で守備的な4-2-3-1というシステムを敷き、守備力と運動量が求められる1トップには渡邉千真を置いたほうがベターだという判断を下した。
つまり前線からのプレッシングや攻守の切り替えという岡田ジャパンの守備面におけるコンセプトを実践するにあたって平山より渡邉の方が適役と踏んだのではなかったか。
しかし、実際はどうだったか。
平山の見せた守備の姿勢と素早い攻守の切り替え。
平山は山田直輝の負傷によって、0-1でリードされていた前半21分から途中出場を果たすと、効果的かつ継続的に前線からプレスをかけ続けていく。執拗に追いかけて味方のスローインを勝ち取るなど平山の守備に対する姿勢が、イエメンに傾いた流れを変えたと断言できる。
守から攻の切り替えの場面でも、後半22分には自身のスライディングタックルから攻撃につなげ、そこから前線に向かったシーンもあった。平山はサポートの働きも含めてうまく強弱をつけながら走りに走った。途中出場ではあったものの、岡田ジャパンのコンセプトに適合したプレーを90分間通してやれるというメッセージを指揮官に伝えたのである。