野球善哉BACK NUMBER
浅村、亀井、枡田、森山……。
チャンスを掴む選手と逃す選手。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama/NIKKAN SPORTS
posted2011/04/27 13:00
開幕スタメンの勢いを駆ってレギュラーに定着した浅村栄斗(西武・左)とヒットが出ず一軍定着に苦しむ枡田慎太郎(楽天)
出場機会を求め、三塁にコンバートしていた巨人・亀井。
「去年のことは忘れてはいけないと思っていた」
20日の阪神戦で、今季初めてスタメンに抜擢された巨人・亀井義行は、相手先発投手が右のスタンリッジだったということ、また、新外国人のライアルが不調だということが重なりあってのチャンス到来に、気持ちを高めていた。
第2回WBCのメンバーだった亀井は、'09年こそチームの主軸として日本一に貢献したが、昨年は苦しいシーズンを送った。長野久義の加入と高橋由伸の復調が大きな要因で、出場機会が激減したのである。
今季はキャンプから三塁手に挑戦。昨年までの三塁手・小笠原道大が一塁に回っていたことで、出場機会を求め、三塁にコンバートした。だが、原監督は開幕から助っ人のライアルを重宝し、亀井の出番はそう多くなかった。
初スタメンの試合では、4打席すべてで得点圏に走者がいる幸運。
しかし、野球の神様は亀井に“親切”だった。
初スタメンのこの機会、亀井に大きなチャンスを与えたのだ。4打席すべてが得点圏に走者を置いての打席だったのである。結果が求められている中で、これは強運と言うほかない。亀井はきっちり仕事を果たし、4打数2安打3打点の活躍で勝利に貢献した。
「前の打者が常にチャンスで回してくれていたので、チームに貢献したいと思っていた」と亀井。与えられた出場機会に、大きなチャンスが巡り、結果を残したのだ。まだレギュラーを奪還したわけではないが、彼には強い風が吹いている。
松井、岩村の不振で楽天・枡田に与えられたチャンス。
「せっかくチャンスをもらっとんのに、2三振ってなぁ。ここで活躍すれば、レギュラーを取れるのに……頑張らなアカン」
渋い表情で語ったのは楽天のチーフスカウト吹石徳一である。
吹石が指していたのは、自身が担当し'05年の高校生ドラフト4巡目で指名した枡田慎太郎についてである。我が子のように担当した選手を見守る吹石は、指名選手たちのその後が、気が気でない。
6年目となる枡田は、2年目から首脳陣の期待を一身に受けていた。2年目の終盤に一軍昇格を果たし、Kスタのお立ち台にも上がったことがある。だが言いかえれば、それでもレギュラーを奪えていないのは、たびたびの抜擢に見合うだけの成績を枡田がその都度残せていないからだ。さらに、今季は元メジャーリーガーの松井稼頭央が加入し、枡田がレギュラーを獲得する可能性はゼロに近いといえた。
ところが、松井と同じくメジャー帰りの岩村のバットが湿ったことと、さらに、二塁を守る高須の年齢を考慮しなくてはならなくなったことで、その次を担う若手の台頭が不可欠ということになった。星野監督は17日のオリックス戦に、枡田をスタメン起用し、チャンスを与えたのである。