野球善哉BACK NUMBER
浅村、亀井、枡田、森山……。
チャンスを掴む選手と逃す選手。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama/NIKKAN SPORTS
posted2011/04/27 13:00
開幕スタメンの勢いを駆ってレギュラーに定着した浅村栄斗(西武・左)とヒットが出ず一軍定着に苦しむ枡田慎太郎(楽天)
異例だった。
開幕を前日に控え、パ・リーグの6球団がTV番組内で開幕スタメンのオーダーを発表したのである。
その賛否はともかくとして、監督自らが陣容を明らかにする番組編成は、あたかも「開幕スタメン」が今季のすべてであるかのように映って見えた。
だが、実際のところ開幕スタメンは何も約束してはくれない。あくまで、開幕時点でのレギュラーでしかなく、重要なのは勝利に貢献できる活躍がこれからどのくらいできるかということなのである。レギュラーの当落線上にいる選手はなおさらである。
プロ野球が開幕して2週間が経った。
開幕時のオーダーを、一度も変えていないチームは12球団でひとつもない。それほど選手が激しく入れ替わっているということである。
開幕スタメンを勝ち取った西武・浅村は26日現在打率.432。
西武の「7番・1塁」で開幕スタメンを勝ちとった浅村栄斗は積極性を前面に押し出していた。気迫みなぎる彼の表情は“この一球”“この1打席”の持つ意味を噛みしめているようだった。
初球であれ、バッター有利なカウントであれ、ストライクであれば振り抜いていく。自らの置かれた立場が安泰でないことを感じていた浅村の中に、「見逃す」という選択肢はほとんどない。
「積極的に行かないと自分の持ち味は出ない」と浅村は言うのである。
始まりは開幕戦の対日ハム戦から。相手は球界のエース・ダルビッシュ有だったが、圧倒的存在感を誇る投手を前にして、浅村に怯む気持ちなどなかった。第1打席では1ボール2ストライクから右翼前安打。3-3の同点で迎えた第3打席では初球を叩いて左中間を破る二塁打で出塁した。第4打席は中前へのテキサスヒット(投手は谷元に交代)。まさに、挨拶代わりの猛打賞だった。
この活躍を機に波に乗った浅村は23日のオリックス戦からはクリーンナップを張っている。「調子がいい選手、悪い選手がはっきりしている。これから、打順も含めて、考えていかないといけない」と渡辺監督は低調な西武打線のテコ入れに、浅村の5番起用に踏み切ったのである。
それでも、浅村の姿勢は変わることはなかった。
「打順が5番でも、自分の持ち味を出すことだけ考えていきたい。気持ちは7番の時と同じ。これからも積極的に行くということです」
打率.432の浅村は26日現在、パ・リーグのリーディングヒッターである。