野球善哉BACK NUMBER
浅村、亀井、枡田、森山……。
チャンスを掴む選手と逃す選手。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama/NIKKAN SPORTS
posted2011/04/27 13:00
開幕スタメンの勢いを駆ってレギュラーに定着した浅村栄斗(西武・左)とヒットが出ず一軍定着に苦しむ枡田慎太郎(楽天)
新たなライバルの一軍昇格で、枡田は崖っぷちに。
結果は、あえなく3打数ノーヒット、2三振。吹石スカウトが嘆いたのも分かるというものだ。チャンスをもらいながら、結果を残せなかったことは彼の未来からまたしても光を奪った。枡田本人も「チャンスをもらっているという意識はありました。力んでしまいました」と臍を噛むような思いをそのままコメントしている。この試合以後、枡田にはスタメンの機会は巡っていないが、与えられたチャンスで結果を残せなかったのだから当然のことである。
その直後、同じ内野手の内村賢介と阿部俊人が一軍に昇格した。枡田とはタイプが違うとはいえ、新たなライバルがファームから這い上がってきたことは、彼にとってレギュラー争いがより一層厳しくなることを示している。
「チャンスがあった時には、『次こそは』という気持ちで準備しています。でも、あまり意識しすぎないようにしたい。下から上がってきた二人は、僕が求められていることとは違う選手たちなので、気にしないで取り組んでいきたい」
枡田は崖っぷちに立たされている。
オリックス・森山は持ち味の脚を生かすプレーを見せたが……。
高卒新人・駿太の台頭で、開幕ベンチを温めたオリックスの森山周は自然体で出番を待ち続けていた。森山の場合、「これまでの経験で、チャンスをもらったと意識をしても、結果が出ないことがわかっているので、いつもどおりにプレーすることを心がける」と語っている。
森山に最初の好機が回ってきたのは、15日の楽天戦でのことである。
1点を追う8回表、森山は先頭打者の代打で出番を得た。結果は遊撃への内野安打。先頭が出塁してほしい場面で、彼の持ち味である脚を生かしての出塁は、大きな意味があった。試合には敗れたが、翌日から岡田監督は森山を3試合連続でスタメン起用しているから、ここでの結果が指揮官の期待を高めたのだろう。
しかし、その3試合の成績は12打数3安打。当然、岡田監督を満足させるものではなく、森山はベンチへ戻る羽目になった。「自然体」を強調した森山のレギュラー奪取は、ひとまず、失敗に終わったのである。
異例の「開幕スタメン」を発表したTV番組から2週間が経ち、新たな「スタメン」を狙う選手たちのせめぎ合いが続いている。与えられたチャンスを、どこで生かし、レギュラーをつかんでいくのか。
勝敗の行方だけではないプロ野球の妙味が、1試合の中には潜んでいる。