第101回箱根駅伝出場校の監督や選手にインタビューするシリーズに、順天堂大学から長門俊介監督に続き、7区で区間2位タイと活躍した吉岡大翔選手が登場です。
佐久長聖高校時代、5000mで13分22秒99という驚異的な高校新記録を樹立。順大進学時は“スーパールーキー”として注目を浴びましたが、なかなかそのポテンシャルを発揮できずにいました。3年生になり、好記録を連発する今、あの記録とどう付き合おうとしているのか。そして走り続ける原動力になっているものとは。吉岡選手の「現在地」について、約50分たっぷりとお話を伺いました。
「自分で言うのもなんですけれど、こんなドラマみたいなことってあっていいのかなって。予選会を1秒差で通過して、7秒差で……陸上って順位やタイムではっきり結果が現れる分、自己ベストを出せたときの喜びもあれば、残酷さも感じられて。それがあの箱根であり、これまでの大学生活だなと思っています」
10区で“四つ巴”のシード争いを繰り広げ、7秒差の11位で涙をのんだ順天堂大学。ただ、長門俊介監督が「希望の持てる結果だった」と振り返るとおり、選手それぞれが来年・再来年にむけて得るものがあったようです。
中でも、7区の吉岡選手は11位でタスキを受け取ると、単独走で次々と抜き去り、チームを8位まで押し上げました。区間2位タイの1時間02分21秒。順大の見せ場をつくり、自身も復活のきっかけをつかむ21.3kmとなりました。

今季は、3月の順大記録会10000mで28分58秒19と自己ベストを更新。金栗記念の1週間後に出場した順大記録会1500mでは、日本人学生歴代8位となる3分39秒15をマークしました。
「10000mは実業団の合宿が終わった翌日だったんです。本当は6000mまで引っ張るつもりだったのが、『もう1000m』と走っているうちに『これ、ラスト1000m上げたらベスト出るかもな?』と思い始めて。ベースが上がっているのは確認できましたし、このペースでハーフを押せるくらいの余裕度は感じられました」
1500mへの出場を決めたのも、記録会直前で「ほとんどミドル系の練習をやらないまま出場しました」とのこと。ランナーとして、いかに持っているポテンシャルが大きいのか。エピソードの節々から、大きな可能性を感じさせてくれました。

一方、トラックでの目標について尋ねると、吉岡選手はこう心中を明かしてくれました。
「5000mは、まだ“あのタイム”がレース中も脳にちらついちゃうので……逆にいったん封印してもいいのかなと思っています。例えば、10000mはまだまだ伸びしろがあると思いますし、順大記録会の走りを振り返ると、一人でも27分台を出せそうな感覚もあったので」
13分22秒。異次元の高校記録と、今の自分。大学に進学してからは、その「乖離」に苦しみ、「何しているんだろうって、今までやってきたことを自分で否定してしまっていた」と振り返ります。浮き沈みはありながらも、復活の前兆を掴み始めている今、あの記録とどう付き合おうとしているのでしょうか。
「最近、陸上を楽しめなくなるのが一番嫌だなって気づき始めたんです。どうしても悪いところ、タイムを更新できないことが目立ってしまうけれど、それに囚われてしまうと陸上を楽しめなくなると思うんです。
もちろん見つめ直さなきゃいけない面もあるけれど、自分の努力を認めてあげる場所も作っておいたほうがいいんじゃないかって。他の種目を伸ばした結果、1500mのようにポンと出るかもしれませんし、やることをやっていればいつかは出ると思っています」
その答えには、13分22秒の「呪縛」から徐々に解き放たれようとしている様子が垣間見えました。また、低調気味だった昨季の前半シーズン、東洋大(当時)の石田洸介選手の呼びかけにも「救われました」と語ります。同じ苦悩を知る者同士、交わした言葉とは――。

動画では、その他にも以下のようなトピックについて伺いました。
- 今までの陸上人生で、一番「楽しかった」レースは?
- 今季のトラックで目指すもの「日本選手権は…」
- 「13分22秒」のトラックから見えた景色と独特の感覚
- そもそも順大に入学した理由は?
- 「カッコいい姿を見せたい」身近で意外な存在
- 一緒に走って感じた三浦さんの「脚の切り替え」の凄さ
- 数字では見えない、吉岡大翔の深い「駅伝観」
答えにくかったかもしれない質問も含めて、自身の言葉でじっくり語ってくれた吉岡選手。時には悩み、落ち込みながらも「今」の自分と向き合おうとする姿勢が印象的でした。ぜひご覧ください。(5月5日取材)
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