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「夢なのか現実なのか分からない」ショート9位から逆転の銅メダル…佐藤駿を奮い立たせた羽生結弦の動画と盟友・三浦佳生の言葉「そうだメダルを取りに来たんだ」

団体戦での会心の滑りから一転、遠のいた夢の表彰台。それでもフリーで安定した演技を見せ、涙のメダルを掴んだ。栄光へと至る道中には、奮起を促した友人の言葉と、自身に勇気を与える本番前のルーティンがあった。(原題:[ショート9位からの逆転劇]佐藤駿「夢なのか現実なのか」)

 フィギュアスケート男子フリー、全24人の滑走が終わり、結果が確定する。「暫定3位」のシートにいた佐藤駿には、何が起きているのか分からなかった。隣の鍵山優真に「駿、メダルだよ」と言われ、「え?」と返す。ショート9位から巻き返しての銅メダルと気付き、嗚咽(おえつ)が漏れる。テレビカメラが2人を捉えると、鍵山が笑いながら、泣きじゃくる佐藤を紹介した。

「夢なのか現実なのか分からないです」

 メダルを授与されると、銅色の輝きに刻まれたオリンピックシンボルを何度も見つめ直した。

 個人戦のショートは、最終グループの1番滑走だった。6分間練習が始まると、チームメイトの応援で盛り上がった団体戦とは、まったく違う空気感が漂った。

「逃げ出したいくらいの緊張でした。6分間練習のあとすぐ演技だと思ったら、練習もいつもより元気が出ませんでした」

 演技冒頭、佐藤のプライドともいえる4回転ルッツを決める。しかし4回転トウループは着氷で勢いを抑えられず、連続ジャンプは2回転からステップアウトした。もともと回転力が強い佐藤は4回転トウループを抑え気味に跳ばなければならない。この日は公式練習から本番までの時間が短かったことで、身体が予想よりも動いていた。

「ちょっと回りすぎてしまいました」

 演技を終え、謝るかのように手を合わせる。88.70点の9位発進。3位との13.85点差は、逆転不可能に感じられた。

「フリーでは、他の選手達から色々なものを吸収して、このオリンピックを良い形で次に繋げたいと思います」

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photograph by Asami Enomoto / JMPA

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