今大会のハイライトは、なんといっても現役最後の大会で4連覇を果たした坂本花織だ。改めて今大会に臨んだ彼女の心境と、その魅力について野口さんにたっぷり語ってもらった。
「こんなにきれいに感動できることはない」という演技
「有終の美、という言葉がありますが、こんなにぴったりの瞬間はないなと感じられました。自分の競技人生の本当に最後とわかっている時に、これだけ出せるっていうのが……。実力を出し切っているからこそ点数も出ているんだけど、そこに見ている全員のいろんな感情が乗ってきていたなと思います。『有終の美って、こんなに涙がいっぱい出るんだ』と感じさせてもらえる演技でしたね」
坂本はSPを僅差で1位通過すると、最終滑走となったFSではすべての要素に加点がつく演技。158.97点で自己ベストを更新した。
オリンピックにピークを1回合わせた中で、1カ月後にここまで上げるのは大変だっただろう……と質問したところ、「そうでもなくて、楽しかった」という答えが返ってきたという。オリンピックでは団体から出場したこともあり、滞在期間は3週間近く。現地ではすべての練習が他の人に見られている状態で、どんどん緊張が高まっていった。

「彼女が言っていたのは、オリンピック期間中は‟キープ”になっていたと。調子を上げ切ったところからずっとキープ、キープ、キープで過ごすのが大変だったと言っていました。今回はオリンピック後に1回休もうとなって、10日間休んだらしいんです。10日休むともう実質2週間しかない状況。筋力も落ちている中でハードに上げていく、1回跳べなくなったトリプルがまた跳べるようになる、みたいな状態をどんどん繰り返していく過程が楽しかった、と言っていましたね」
坂本の言葉を借りれば「青春」だった時間。オリンピックがダメだったと引きずるわけでもなく、リベンジというわけでもなく、純粋に楽しもう、出し切ろうというポジティブな気持ちで世界選手権に臨んだ。
「人のために」力を発揮できる選手
かつてはトリプルアクセルや4回転ジャンプを練習するなど、悩んだ時期もあった。そこから振付師のブノワ・リショー氏に「カオリにはクオリティの高いジャンプがあるよ」と気づかせてもらい、大技がない分「絶対にGOEを上げるんだ」という思いで演技を磨き上げてきた。
リンクに送り出される前、中野信子先生からは「私のために、小林さん(今季で引退する元強化部長の小林芳子氏)のために滑って」と言われ、全部を出し切ることができた。「花織さんは自分のためじゃなくて、人のための方が力を出せる、だからそう声をかけたと中野先生が言っていて。花織さん自身もそういう方が自分は力が出せるということに、今回改めて気づいたと言っていましたね」
坂本から千葉へ、エースのバトンタッチ
坂本に次いで表彰台に上ったのは千葉百音。ミラノ・コルティナ五輪では素晴らしい演技を見せながら4位で悔し涙を流し、リベンジを果たした形になった。
「オリンピックの悔しさがあって、世界選手権にもう1回ピークを持ってくるという強い気持ちで来たので、本当に彼女の頑張りの結果だったと思います。合計220点以上を目指すというすごく高い目標を掲げて、見事に越えた(228.47点)わけで。素晴らしいですね」

千葉の演技には、坂本とはまた違った魅力がある。美しいスケーティングと1つ1つのポジション取りのきれいさ、ジャンプ。野口さんは「これもまた、スケートのお手本の1つなんです」という。坂本は持って生まれた筋力の強さなども生かしたダイナミックな滑りが魅力的だが、千葉のテクニックにはいい意味で教科書的な「お手本にしたい」というところがある。「世界で2番になったことで、『これがもう1つのいいスケートだよね』とちゃんと評価されてよかったなと思います」
坂本と千葉は演技後に抱き合った。野口さんはその姿に、日本女子エースのバトンタッチのようなものも感じたという。
ポッドキャストでは他にも、以下の話題を話している。
- 練習を10日間休むと足が細くなる…トップ選手の現実
- 中井亜美選手は9位…でも何も心配することない!
- 9人が200点越えに「全体のレベルが引き上がってきた」
- ヨーロッパ系選手の台頭に、来季は勢力図が変わるかも?
- なぜヨーロッパ系選手のスケーティングは美しいのか
- 坂本花織、早速コーチ始動?期待するのは…
日本のみならず、世界中のフィギュアファンを魅了した坂本花織のラストダンス。演技を見返しつつポッドキャストを聞いて、改めて彼女の素晴らしさに触れてほしい。(4月3日収録)
※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。
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