世界有数の観光都市、フィレンツェ。何かのイベントがあったのかと錯覚するほど、市街地には季節や曜日を問わず人が溢れる。中でも一層賑わう場所に何があるのか。背伸びして覗き込もうとすると、少し得意げに、石川真佑がニコニコしながら指差した。
「ヴェッキオ橋です。めちゃくちゃ有名なんですよ。私も最初は全然わからなくて、何でこんなに人がいるんだろう、って思っていました」
渡欧して5カ月が経つ。トラムやメトロもスムーズに乗りこなし、ジェラートもイタリア語で「カップ」か「コーン」か、何個ほしいか注文できるようになった。
「毎日すごく充実しています。自分にはここが合っているなぁ、って思いますね」
壁にぶち当たり自然と思った「海外に行きたい」
下北沢成徳高を卒業した2019年に東レへ入団。同年に日本代表へ初選出され、'21年の東京五輪にも出場した。5歳上の兄で、男子バレー日本代表主将の石川祐希は、イタリアで9年のキャリアを誇るセリエAの中心選手へと進化を遂げ、今季はミラノで主将代行も務める。
世界で活躍する兄の印象もあり、周囲から「いつか真佑も海外でプレーするんでしょ?」と聞かれることはあった。だが、10代の頃は「考えるどころか、選択肢にもなかった」。「海外でプレーする」ことが現実として動き出したのは、東京五輪で「壁」にぶち当たってからだ。
「海外の選手と対戦する中で、大事な試合、勝たなきゃいけないところで上がって来たボールを最後に決めきれなかった。このままじゃ世界では戦えない、と突き付けられて、自分が成長したい、うまくなりたい、と考えた時に自然と『海外へ行きたい』と思うようになったんです」
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