日本男子バレー史上最強チームと呼ばれて臨んだ五輪予選。だが序盤戦、捨て身の相手に苦戦し、痛恨の1敗を喫する。主将としてエースとして、その苦境をどう乗り越えたのか。当時の心境、仲間たちへの想いについて改めて振り返る。
石川祐希が、声を詰まらせながら、言葉を絞り出す。
「本当に苦しい状況でしたし、最後まで信じて、自分たちを信じて、戦った結果だと思います。目標を……達成したので、すごく嬉しいです」
普段、試合中以外ではあまり感情をあらわにすることのない主将が、パリ五輪の出場権を掴んだ直後のコートインタビューでは込み上げるものを抑えられなかった。
崖っぷちから甦り、掴み取った切符。日本の逆襲は、エース・石川の復活とともに成された。
今の日本代表は史上最強と言っていい。イタリア・セリエAで9季目を迎えた大黒柱の石川を筆頭に、海外リーグを経験する選手が増えて個の力が格段に上がり、フィリップ・ブラン監督の的確な戦術と噛み合ったことで年々力をつけてきた。今年はネーションズリーグで3位となり、主要な世界大会では46年ぶりとなるメダルを獲得。8月のアジア選手権も制覇し、世界ランキング5位で「パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」を迎えた。8カ国中2カ国のみが出場権を得られる今大会は、強豪のセルビア、スロベニア、アメリカとの終盤の3連戦がヤマ場だと思われた。
ところが初戦、力の差があると見られていたフィンランドとフルセットまでもつれた。第5セット中盤、石川はサーブレシーブを立て続けに崩され、思わず顔を覆った。普段ならサーブレシーブが乱れても、自分でスパイクを決めて何事もなかったように試合は流れていくが、この日はスパイクもミスになり連続失点。10-11と逆転され、大塚達宣と交代した。
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photograph by Yuki Suenaga