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山縣亮太の決断に想う「膨大な努力がミクロの世界へと吸収される」100mの奥深さ<パリ五輪を断念>

2024/06/09
今年4月29日の織田記念陸上男子100mの予選では10秒58の組3着に終わり、B決勝は棄権した

 ざっと35年前。あれは新宿の裏道の小さな酒場だった。本誌の版元の出版社に勤める年長の常連に質問した。

「井伏鱒二のような大作家の原稿をもらって、よくないなと思ったら、書き直してください、なんて伝えられるもんですか?」

 いまは亡き紳士の穏やかな口調が忘れられない。

「そういうときはね。先生、ここのところですが、ちょっと違和感が。そう言うのです」

 駆け出しスポーツ記者はあの夜に「いわかん」という日本語の懐の深さを知った。

“違和感”から完全な状態で走れない。

 陸上競技の男子100mの日本記録保持者の山縣亮太がパリ五輪出場を断念した。5月16日の会見で明かした。

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photograph by JIJI PRESS

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