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「慎重に冷静に、どの試合も勝ちたい」紀平梨花のメンタルと“4回転2種類を回避”戦略を深読みする<ドキュメント/2020年>

2020.2.8 Four Continents Championships
シニアデビューした昨季、GPファイナルで初出場初優勝。一躍、日本女子を牽引する存在となった紀平の前に、ロシア女子の新星3人が壁となって今季立ちはだかった。新たな武器、4回転に注目が集まる中、彼女が描く未来図を探る。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2019-2020シーズン総集編 [日本女子エースの戦略] 紀平梨花 「慎重に冷静に勝ちたい」)

『女子の4回転』という新時代の到来に、世界が翻弄された1年だった。今季シニアデビューしたロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ、アリョーナ・コストルナヤは、2人が4回転を得意とし、1人がトリプルアクセルを跳ぶ。そのロシア旋風に、世界でたった1人、同レベルの武器で立ち向かっていったのが紀平梨花だった。

ロシア勢に対抗するため、いち早く4回転2種類を練習。

 紀平は、3人のシニアデビューに間に合わせようと、早めに4回転に着手していた。'19年4月の国別対抗戦が終わると、すぐに米国コロラドへ。コロラドは1000m超の高地のため気圧が低く、ジャンプが高く上がる。新たなジャンプの成功体験を積むには好環境であり、紀平も2カ月に及ぶ合宿で、4回転サルコウとトウループを積極的に練習した。

 帰国直後は、自信に満ちた表情だった。

「充実していて、すごく一瞬に感じた2カ月でした。帰国してからもコロラドと同じくらい良い感じで、氷に降りて一発目で跳べることもあります。一発で決まるのは、試合でも跳べるという意味で良い傾向です」

 2種類を練習したのは、濱田美栄コーチによる戦略だった。

「4回転サルコウのようなエッジで跳ぶジャンプは、会場の氷の質で感覚が変わる。状況によってはどうしても跳べない日がある。4回転トウループの方が感覚が固まれば成功率も高まるので、2本だてで練習したほうがいい」

 紀平もこう話した。

「4回転サルコウの感覚が良いので、まず1種類を完成に持って行って、試合で入れていきます。でも4回転サルコウの調子がよい日は4回転トウループにもチャレンジしています。絶対にシーズン初戦から入れて、シーズン中に安定感を出したいです」

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photograph by Yukihito Taguchi

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