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「滑らない時間を生かしてほしい」羽生、チェン、宇野…本田武史が読み解く男子フィギュア“勢力図”<解説/2020年>

2020年コロナ禍で世界選手権が中止になった
最大の目標だった世界選手権は消えた。だが、そこを目指す過程を紐解けば、来季の構図までうっすらと見えてくる。王者、新世代ひしめく男子の要諦―。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2019-2020シーズン総集編 [本田武史が解説する] 男子フィギュアの最新パワーバランス)

 唐突に終わりを迎えたシーズンでも、選手たちには、それぞれに紆余曲折を味わいながら進んできた時間があり、個々のストーリーがあった。

自分らしさを追求した羽生、逆算して積み上げるチェン。

 彼らの歩みを見続けてきた本田武史が最初に言及したのは羽生結弦だった。

 羽生といえば、四大陸選手権のプログラム変更が大きな話題となった。異例の決断と見る向きもあったが、本田は否定する。

「プログラムの変更は多いわけではありませんが、昔のプログラムに戻すことは意外とあります。僕も経験がありますから、驚きはありませんでした」

 変更した理由を、こう推測する。

「ショートプログラムの『秋によせて』、フリーの『Origin』を全日本選手権まで滑ってみて、狂いがあったんじゃないでしょうか。本人しか感じない部分だと思いますが、滑っていて体力の消耗が激しかったりすると、プログラムの中でジャンプのタイミングなど呼吸が合わなくなる。すると焦りが出てミスが出る。世界選手権をにらみ、勝つためにはどうすればいいのかを考えたときに、自信のあるプログラムを、と思ったのではないでしょうか」

 羽生が選択したのは、ショートが『バラード第1番』、フリーは『SEIMEI』。平昌五輪での金メダルをはじめ、数々の名場面を築いてきたプログラムだった。

「四大陸選手権では、ショートであれだけの演技をして世界最高得点を出せた。プログラムへの安心感、滑りやすさという部分を感じました。フリーは幅広く知られているプログラムだけに、比較される難しさがあったと思います。過去の自分との闘いですよね。試合ではジャンプのミスもあったけれど、4回転ルッツを入れたり、演技時間のルールが変わって30秒短縮されたこともあり、違うプログラムとして成立していたように思います」

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photograph by Asami Enomoto / T Yukihito Taguchi

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