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名振付師・ブノワ・リショーの哲学「理解よりも“感じて”もらうスケートを作りたい」…坂本花織、紀平梨花の振り付けを担当<独占インタビュー/2021年>
2024/03/02
独創的な動きでスケーターの個性や可能性を引き出す手腕の高さ。世界トップの振付師が見た、紀平、坂本、日本女子選手の表現の魅力とは。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2020-2021シーズン総集編[名振付師の哲学] ブノワ・リショー 「“理解”よりも“感じる”スケートを」)
片手側転は「提案したらすぐできた」。
―今季は、紀平選手に初めて振付をされましたね。どのように進めたのでしょうか。
「依頼が来たのは8月になってからでした。曲は梨花が選んだのですが私のイメージとは違ったので、作曲家のセドリック・ツールにアレンジを頼みました。アレンジ版は『炎』をテーマにしており、聞いた瞬間、この曲なら梨花と共に完璧な炎を創作できると直感しました。梨花は6日間イタリアに来たのですが、プログラム自体は1日で作ってしまいました。私は振付のイメージが明確で、そこに能力のあるスケーターが揃うと驚くようなスピードで完成するのです。梨花は私の求めるコンテンポラリーなスタイルをすぐに理解しました。その呑み込みの早さに感心させられました」
―片手側転はとても話題になりました。
「私はプログラムに、何か新しい動きを入れるようにしています。梨花には、ステップシークエンスを作り終えたときに『冒頭に片手側転を入れたい』と提案しました。するとトライしてすぐに出来たので、逆に私の方が驚きました。何度もトライしたとか、1カ月練習してできるようになったのではありません。提案したらすぐにできたんです」
―他にも、難しい動きを試したそうですね。
「梨花とは色々な動きをトライしましたが、企業秘密にさせてください(笑)。私には、いつか実現してみたい動きやトリックのアイデアがあり、『この人だ』と思う身体能力のスケーターに出会えた時、初めて形になるのです」
―片手側転だけでなく、ステップシークエンス全体も個性的な動きですね。
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photograph by Carte Blanche Labs