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「音に触っているような手の動きをしている」指揮者・永峰大輔が語る羽生結弦の“格調高さ”「演技に現れる彼の内面が…」

「ディズニー・オン・クラシック」でも客演指揮者を務めた永峰大輔さん(右)
「羽生結弦プログラムコンサート」でタクトを振った指揮者は、音楽への理解を深めようとする羽生の姿勢にひたすら感嘆する。スクリーンに映る演技中の彼の指先に見たものとは―。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2020-2021シーズン総集編永峰大輔 「音に触れる魔法使い」)

 昨年1月に開催された「羽生結弦プログラムコンサート」でオーケストラの指揮をさせていただきました。このコンサートはステージの巨大なスクリーンに映し出される羽生選手の演技の映像とオーケストラの演奏を融合させる形式で実施されました。演技と演奏をきちんと合わせて表現したいという主催者の方の意向から、クリック(テンポをキープするための音)に合わせて音源通りのテンポで演奏する必要があり、それができる人を探していたそうです。相談を受けまして、クリックをやったことはありませんでしたが、羽生選手の一世代前あたりからフィギュアスケートを観ていたこともあって、「チャレンジさせてください」と取り組ませていただきました。

音を指先まで感じて踊っている。

 羽生選手が小さな頃に使用していた曲から始まり現在に至るまでの歴史をたどっていく構成となっていました。その中で印象に残っているのは、『オペラ座の怪人』です。

 テンポが揺れるので難しい曲でしたが、好評を得ることができました。特に2回目の公演では「羽生選手が音を聴いて実際に踊っているみたいだ」とお客様に言っていただくほどでした。実際、演技と演奏がぴたりとはまるという段階よりも、もっと高い次元で組み合わさった瞬間であったと思います。

 音楽でも指揮者、プレイヤーである演奏家、お客様が一体化する瞬間が生まれることがあります。指揮者としてデビューして10年くらいですが、その間に数えるほどしか経験がありません。そういうときを迎えるには様々なきっかけがありますが、例えば指揮者もプレイヤーもお客様も、その場を「意義深いもの」と捉えていることがその1つです。『オペラ座の怪人』でそれが生まれたのは、難しい曲に挑んだ僕やプレイヤーの思い、そしてお客様の思いもあったからではないでしょうか。

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photograph by Yukihito Taguchi/Yuki Suenaga

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