いまや、日本人が欧州で主将を務める時代になった。時に熱く、時に冷静にチームの先頭に立つ姿は頼もしい。多様な国籍の選手をいかにしてまとめているのか。彼らを抜擢した監督らの証言から分かったことは――。
日本代表のキャプテン、遠藤航は2021年夏にシュツットガルトでチームの正主将に選ばれた。1893年に創設されたドイツの伝統的なクラブで、日本人選手がその重責を託されたのは初めてのことだった。
「ワタルは常に、ピッチ上で高いクオリティーを示し、自分の限界までプレーしようとする。それが彼の強みだ」と、当時28歳のMFを主将に抜擢したペルグリノ・マタラッツォ監督は話した。
「できることなら、いつでもキャプテンマークを巻きたい」と語る遠藤は、自他共に認める生粋のリーダーだ。アマチュア時代、世代別代表、Jリーグのクラブと、行く先々で腕章を巻いてきた。きっとそれぞれのチームの監督も、前述のアメリカ人指揮官と同じような印象を抱いていたはずだ。
とはいえ、それがブンデスリーガでも実現すると予想できた人は、少なかっただろう。なにしろ'19年夏に、2部リーグを戦っていたシュツットガルトへ1年間の期限付きで加入した当初、彼は約3カ月にわたって出番を得られなかったのだ。
そこで腐ることなく、ライバルのプレーを分析するとともに自分の強みを磨き、好機が巡ってきたら、両手でしっかりと掴む――。言葉にするほど簡単ではないはずだが、遠藤はまさにそれをやってのけたわけだ。「僕のポジションを奪ったワタルから、多くを学んだよ」と明かしたのは、今のシュツットガルトの中盤に君臨するアタカン・カラソルだ。このトルコ系ドイツ人MFも、立場が逆転してからは、遠藤から多くを“盗もう”としたと言う。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by AFLO / Getty Images