成長と停滞、そして再活性――。その繰り返しによって日本サッカーは成熟してきた。そこで重要な役割を担うのが、組織をまとめる主将と、組織を揺さぶる革新者である。チームに新たな活力を与えてきた「破壊的リーダー」たちの足跡を振り返る。
日本代表史をJリーグ創成期から振り返ると、柱谷哲二、井原正巳、宮本恒靖、長谷部誠、吉田麻也など傑出したキャプテンたちがチームを引っ張ってきた。監督と選手のパイプ役になり、組織を「整える」ことに長けたリーダーである。柱谷は闘将のイメージが強いが、個性派集団がバラバラにならないようまとめることにも力を発揮した。
しかし、安定を保つだけでは成長スピードに限りがあるだろう。大きな飛躍を成し遂げるには、創造的破壊が必要だ。
その役目を担ってきたのが「破壊的リーダー」である。ラモス瑠偉、三浦知良、中田英寿、本田圭佑――。主将のそばには、新たな常識を掲げ、組織を揺さぶって前進させる革新者がいた。
真っ先に沈黙を破って発言した本田。
2018年ロシアW杯におけるベスト16進出は本田圭佑を抜きに語れない。
同年4月に前任者のヴァイッド・ハリルホジッチが解任され、新監督の西野朗に与えられた準備期間は1カ月しかなかった。 西野はチームミーティングで「自分は世界を知らないから、みんなで意見を出して話し合ってくれ」と選手たちに呼びかけた。トップダウンではなく、ボトムアップのマネジメントを採用したのである。
とはいえ、持論を展開するのは簡単ではない。場は静寂に包まれた。そのとき真っ先に沈黙を破ったのが本田だった。
「W杯で勝つには、ゲームを支配して敵陣でボールをキープし、相手を疲れさせるサッカーがいい」
2014年ブラジルW杯の際、「俺たちのサッカー」と呼ばれた強気なポゼッションスタイルである。
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